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民法の改正 児童虐待防止のための親権に係る制度の見直し その6  [民法]

民法第842条 未成年後見人は,一人でなければならない。

要綱
第3 未成年後見
1 民法第842条の規定は,削除するものとする。
2 未成年後見人の選任
 ①  未成年後見人がある場合においても,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,民法第840条に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で,更に未成年後見人を選任することができるものとする。
 ②  未成年後見人を選任するには,未成年被後見人の年齢,心身の状態並びに生活及び財産の状況,未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無),未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならないものとする。


 未成年後見人の数及び法人を未成年後見人に選任することができること

 現民法では,後見人の数及び法人を後見人に選任することについて,未成年後見と成年後見で異なっています。

 未成年後見では,民法824条が,「未成年後見人は,一人でなければならない。」としているのに対し,成年後見では,民法834条3項が,複数の成年後見人を認めています。また,同条4項をみると,成年後見では,法人が成年後見人になることを認めていますが(同括弧書),未成年後見では,規定がありません。

 実は,平成11年の民法改正前においては,成年後見(禁治産後見)も未成年後見も,同じく後見人は一人に限り,法人が後見人になることを認めていなかったのです。同改正により,成年後見についてだけ,複数・法人を認めたのです。成年後見制度の利用者の多様なニーズに応える保護・支援の方策として,成年後見の体制についての選択肢を広げる観点から複数の成年後見人を選任することができるようにしたものであると言われます(成年後見制度の改正に関する要綱試案の解説P9参照)。そして,同様の観点から,法人を成年後見人に選任することができることとしたものです。

 平成11年の民法改正当時においては,未成年後見人は1人で十分であり,逆に,複数であると責任が分散し,事務が渋滞すると考えられ,改正は行われませんでした。

 今回,未成年後見と成年後見とで,複数の後見人を認めること及び法人の後見人を認めることについて,同じにするものです。複数の成年後見人を認めることについては,「例えば,未成年者自身に多額の財産があるような場合に,身上監護については親族から未成年後見人を選任することができるようにしてもよいのではないかといった意見など,複数の未成年後見人を認めるべきとの意見」(児童虐待防止関連親権制度部会資料4P14)を取り入れて改正しようというものです。法人については,「成年後見人の引受手を確保するのが困難であるといわれている。そこで,未成年後見人の引受手の選択肢を広げるために,法人を未成年後見人に選任することができるようにする」(同P13)との考えにより,また,「事実上自立した年長者の場合であれば,未成年後見人が現実に引き取って世話をするということはなく,現実には財産に関する権限の行使が主な職務となることを考えると,法人が未成年後見人の職務を行うことは不適当であると一般的にはいえないとの意見」も取り入れて,改正しようというものです。

 なお,「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案」に関する意見募集に対する意見のうち,上記箇所に関する裁判所と日弁連と日司連の意見を紹介します(児童虐待防止関連親権制度部会資料7 P17~P18,P20から)。

「複数の未成年後見人を選任することができるものとする。」について。
・未成年者の身上監護は親族後見人が責任を持つのが適切であっても,不正あるいは不適切な財産管理を防止するという観点からは,第三者後見人を選任するのが適切な場合があると考えられることや,実務上,成年に達しているが若年のきょうだいしか後見人候補者がない場合や,未成年者名義の高額の財産がある場合など,財産管理について第三者後見人を選任すべき事案が散見されることから,複数の未成年後見人を選任することができるものとすることに賛成である。(裁判所)
・未成年後見人の負担と責任が集中することを避けるために,複数の未成年後見人を選任できるようにすることは効果的であると考えられる。(日弁連)
・未成年後見人が就任しなければならない事案は,複雑なケースが多く,一人に限定してしまえば未成年後見人の負担が大きくなり過ぎ,引き受ける者が限定されてしまう状況がある。また,専門分野の異なる複数の専門家を未成年後見人に選任することが可能になれば,未成年者の利益を優先とした未成年後見人が職務を遂行できると考える。(日司連)


「法人を未成年後見人に選任することができるものとする。」について。
・自然人後見人(特に第三者後見人)にとって,長期間に及ぶ未成年後見は負担が重いが,法人後見人であれば,状況の変化に応じた担当者の交代が可能であることや,未成年者が児童養護施設等に入所している場合,当該施設が後見人になることができることから,未成年後見人として法人を選任することができるものとすることについては,賛成する意見が大勢であった。一方,法人において適切な身上監護が可能なのか懸念されることから,反対の意見もあった。(裁判所)
・現在,親権喪失制度が十分活用されていない一つの理由に,未成年後見人のなり手がいないいう問題が指摘されている。そして,未成年後見人のなり手がいない理由として,現行法では未成年後見人は自然人でかつ一名のみとされていることから,負担と責任が集中してしまう点が指摘されている。そこで,法人も未成年後見人に就任できるようにすることで,かかる集中を緩和することが期待できる。(日弁連)
・未成年者の親族以外の者,例えば法律専門家等の第三者が未成年後見人に就任している場合,未成年後見人が未成年者を引き取って現実に監護するとは考え難い。そのため,未成年後見人の主な職務は財産管理となり,現実の監護は施設長または里親が行っている場合がほとんどであると思われる。したがって,一律に法人を未成年後見人に選任しない合理性はない。もっとも,未成年後見人の受け皿となる法人の要件を定めることも検討すべきである。(日司連)

民法第843条
3 成年後見人が選任されている場合においても,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により又は職権で,更に成年後見人を選任することができる。
4 成年後見人を選任するには,成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況,成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは,その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無),成年被後見人の意見その他の一切の事情を考慮しなければならない。

つづく

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コメント 1

隼

法制審議会第164回会議(平成23年2月15日開催)において,要綱案は,全会一致で原案どおり採択され,要綱となったので,今回から「要綱」としました。
http://bit.ly/i6d6NX
by (2011-02-24 22:19) 

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