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任意後見制度 その6 [後見制度]

任意後見人の就任,資格

 本人,配偶者,4親等内の親族又は任意後見受任者の請求によって家庭裁判所によって,任意後見監督人の選任の審判が行われると,任意後見契約の効力が発生します(任意後見法2条柱書)。その時点で,任意後見受任者が任意後見人に就任することになり,本人から委託された後見事務(生活,療養看護及び財産管理に関する事務)について,代理権を行使することができるようになります。

 任意後見人の資格については,任意後見法は制限を設けていません。そこで,親族・知人が最も多いようですが,そのほか,司法書士,弁護士,社会福祉士というところでしょうか。なお,すでに述べたように,任意後見法4条1項3号ハは,家庭裁判所が任意後見監督人を選任しない場合として,任意後見人が「不正な行為,著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者」を挙げていますから,特に,親族・知人が任意後見受任者とされているときに,家庭裁判所は,これにより,任意後見契約を発効させないということもありそうですが,実際はどうでしょうか。このあたりの資料がほしいところです。

 法人も任意後見人となることができます。任意後見契約は,任意代理契約の一類型ですから,当然に,自然人だけでなく,法人も任意後見受任者となり,任意後見人になることができます。だから,司法書士法人も,任意後見人になることができることになります。リーガルサポートは,任意後見人になっているのでしょうか(任意後見監督人になっているところがあるということは聞きました)。なお,営利法人でも差し支えありません。信託銀行等ですね(実例はあるのでしょうか。パンフレットをつぶさに見たことがないのですが・・・)。


任意後見制度 その5 [後見制度]

任意後見契約の効力の発生 任意後見監督人の選任

 任意後見契約は,家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時からその効力を生じます(任意後見法2条1号)。

 では,本人の精神障害の程度がどのようになって,誰の請求によって,任意後見監督人が選任されるのでしょうか。任意後見法4条柱書本文です。「任意後見契約が登記されている場合において,精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは,家庭裁判所は,本人,配偶者,4親等内の親族又は任意後見受任者の請求により,任意後見監督人を選任する。」

 精神障害の程度としては,事理を弁識する能力が不十分とありますから,これは,法定後見制度における補助の場合と同じ程度であると言えます(民法15条参照)。家庭裁判所に対して選任の請求をすることができるのは,本人,配偶者,4親等内の親族又は任意後見受任者です。通常は,任意後見受任者となるのではないでしょうか。親族がいれば親族から連絡が入って,あるいは,任意後見契約と同時に見守り契約をして,その履行により任意後見受任者である司法書士等自身が知り,司法書士等が家庭裁判所に請求するというものです。補助の程度ですから,任意後見法は,本人の意思の確認が必要であると考え,本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには,あらかじめ本人の同意がなければならないとされています。実務の場面では,それゆえに,任意後見受任者から請求するのが難しい場面があると言われます。本人がそのような状況になったことを認めたくない等の理由で,医師の診察を受け容れないということがあるとのことです。本人がその意思を表示することができないときは,同意は不要とされていますから(同ただし書),その場合には問題はないのですが,補助や保佐の程度のときが問題ということになるのでしょうね。

 なお,任意後見法4条ただし書は,家庭裁判所が任意後見監督人を選任することができない場合を各号で挙げています。この場合には,任意後見契約を発効させるべきではないというのです。次の各場合です。

一 本人が未成年者であるとき。
二 本人が成年後見人,被保佐人又は被補助人である場合において,当該本人に係る後見,保佐又は補助を  継続することが本人の利益のために特に必要であると認めるとき。
三 任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。
  イ 未成年者,家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人又は補助人,破産者,行方の知れない者
  ロ 本人に対して訴訟をし,又はした者及びその配偶者並びに直系血族
  ハ 不正な行為,著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

 一は,本人が未成年者である場合に任意後見契約を発効させると,親権者又は未成年後見人との権限抵触の問題を生ずるからです。二は,任意後見制度によっては本人の利益を守ることができないときは,法定後見等を継続させる必要があるからです。「本人のために特に必要であると認めるとき」とありますが,任意後見契約を締結した本人の意思をできるだけ尊重するという趣旨です。本人保護と本人の意思の尊重の衝突の場面です。三は,このような者が任意後見人に就任することは不適当だからです。







任意後見制度 その4 [後見制度]

任意後見契約の現状

 では,任意後見契約の現状はどうでしょうか。これまでどれだけ任意後見契約が締結され,登記されてきたかということです。私が一番知りたいところでした。司法統計を調べれば出てくると思うのですが,横着しまして,先日のリーガルサポートの研修会での梶田美穂さん(リーガルサポート大阪支部 副支部長)が講義で紹介されましたので,そこから引いてきたいと思います(とてもいい講義でした。情熱が伝わってくる講義でした。ありがとうございました)。委任者の年齢やどのような人が受任者になっているかということも,知りたいですね。この講義は,昨年(平成21年)の8月29日に行われたものです。

 平成12年4月から平成20年12月までの任意後見契約締結登記の件数累計が,3万2,983件だそうです。どうでしょう。多いと感じますか,それとも少ないと感じますか。結構多いではないかと思った人もいるかもしれませんが,私は,少ないなと思う1人です。しかし,平成20年中は,7095件ということですから,増えてはきているのでしょうね。

 次に,任意後見監督人の選任の申立ては,というと,全体の6%から7%かとされています。2,000人かそれより少し多いというところですね。それにしても,少ないですね。委任者の年齢からみて任意後見契約が効力を生ずる前に本人が亡くなってしまったとか,比較的に若ければ(若くなくてもでしょうか)本人が同意をしない等の理由によるのでしょうか。

 委任者の年齢は,80歳以上が約半数を占め,受任者は,近親者・知人が70%で,司法書士が15%だそうです。

 さて,任意後見人の報酬ですが,近親者・知人等が70%をしめるということですから,この場合は,無報酬が多いと考えられます。無報酬は,50%だそうです。残りの50%は,月3万円未満が最も多く,次いで,3万円から5万円,10万円以上が5%だそうです。報酬については,1月の定額の基本的な報酬のほかに個別的な報酬(特別報酬)も加わり,金銭的ゆとりを有する者だけが利用できるという声もあるようです。


任意後見制度 その3 [後見制度]

任意後見契約の締結と登記

 任意後見制度を利用するためには,任意後見契約を締結しなければなりません。この当事者は,本人と任意後見受任者です。任意後見法において,本人とは,「委任後見契約の委任者をいう。」と任意後見法2条2号が定義しています。任意後見受任者とは,任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいいます(同3号)。任意後見受任者は,任意後見契約が効力を生ずると,任意後見人となります(同4号)。

 本人が制限行為能力者である場合にその法定代理人が任意後見契約を締結することもできます。これは,知的障害者や精神障害者等のいわゆる「親なき後」(親の老後,死後)に備えるために利用するという場合です。

任意後見契約は,法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならないとされています(任意後見法3条)。これは,公証人の関与によって,任意後見契約の適法性・有効性を担保する等のためです。というわけで,必ず,公証人役場に行かなければならないといいうことになります。ということは,公正証書作成の手数料が必要ということになります。公正証書作成の基本手数料は,1万1,000円です(公証人手数料令別表)。

 任意後見契約が締結された場合には,その公示のため,登記をしなければならないことになっていますが,公正証書を作成した公証人が登記所に任意後見契約の登記を嘱託しなければならないとされています(公証人法57条ノ3第1項)。

 したがって,登記手数料(平成23年3月31日までは登記印紙,4月1日からは収入印紙によって納付することとされています)のほか,登記の嘱託についての手数料が必要となります。前者は,4,000円(登記手数料令16条1項)です。後者は,1,400円です(公証人手数料令39条の2)。そのほか切手代等のブラスαが必要となります。

 後見登記等(成年後見,保佐及び補助に関する登記並びに任意後見契約の登記)に関する事務は,法務大臣の指定する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が,登記所としてつかさどるとされていますが(後見登記等に関する法律2条1項),平成12年2月24日に告示第83号で,東京法務局が指定されて以来,東京法務局だけが,その指定法務局とされています。

 今日の条文 任意後見契約の登記の登記事項を定めた後見登記等に関する法律第5条です。
任意後見契約の登記は,嘱託又は申請により,後見登記等ファイルに,次に掲げる事項を記録することによって行う。
一 任意後見契約に係る公正証書を作成した公証人の氏名及び所属並びにその証書の番号及び作成の年  月日
ニ 任意後見契約の委任者(以下「任意後見契約の本人」という。)の氏名,出生の年月日,住所及び本籍(外国人にあっては国籍)
三 任意後見受任者又は任意後見人の氏名及び住所(法人にあっては,名称又は商号及び主たる事務所又は本店)
四 任意後見受任者又は任意後見人の代理権の範囲
五 数人の任意後見人が共同して代理権を行使すべきことを定めたときは,その定め
六 任意後見監督人が選任されたときは,その氏名及び住所(法人にあっては,名称又は商号及び主たる事務所又は本店)並びにその選任の審判の確定の年月日
七 数人の任意後見監督人が,共同して又は事務を分掌して,その権限を行使すべきことが定められたときは,その定め
八 任意後見契約が終了したときは,その事由及び年月日
九 保全処分に関する事項のうち政令で定めるもの
十 登記番号

 3号に注意しておいてください。任意後見人の住所まで登記事項とされている点です。法人の場合には,だれが任意後見人の職務をしているか登記からはわかりませんが,自然人の場合には,登記によって,その住所まで容易に判明することことになります。

任意後見制度 その2 [後見制度]

 精神上の障害によって事理を弁識する能力(判断能力)が劣るようになった人をサポートする制度としての後見制度には,法定後見制度と任意後見制度があります。

 法定後見は,民法が定めている制度であり,すでに精神障害によって事理を弁識する能力が劣るようになった人について,一定の者の請求により家庭裁判所が後見等の開始決定をすることにより行われ,後見人等(成年後見人,保佐人,補助人)も家庭裁判所が選任します。成年後見,保佐,補助と3類型があります。

 これに対して,任意後見は,本人の事理弁識能力が正常であるうちに,将来事理弁識能力が不十分になった場合に備えて,あらかじめ,任意後見受任者(例えば,プロであれば,司法書士や弁護士等)と,自分の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務の委託,その委託に係る事務について代理権を付与する旨の契約を締結して,いざ,事理弁識能力が不十分になったというときに,一定の者の請求により,家庭裁判所が任意後見監督人を選任することにより,効力が発生し,開始されるというものです。必ず本人の意思に基づくものであることから,任意後見制度と呼ばれています(もっとも親権者等の法定代理人が任意後見契約を締結することも可能です)。

 (なお,任意後見法が典型的に予定した類型は,上記のように,現時点において判断能力に問題はない人が,将来に備えて任意後見契約を締結するというものですが,すでに判断能力が不十分である人についても,契約締結に必要な意思能力があるのであれば,任意後見制度を利用することができないわけではありません。しかし,このような場合には,法定後見制度を利用できるものであれば,その方がよいのではないかと私は思います。)

 このような契約は,民法による一般の任意代理契約(財産管理等委任契約)でも可能です。委任者の精神障害のレベルが一定程度になったときに,一定範囲の代理権の授与の効果が発生するという内容の契約を締結すればよいからです。しかし,このような任意代理契約は,本人が事理弁識能力が不十分となった段階において契約の効力が発生するものですから,本人のコントロールが及ばなくなってからの受任者に対する公的な監督の制度がないので,本人にとって大きな危険があります(受任者の濫用の危険)。利用しにくいということにもなります。

そこで,立法担当者によれば,本人が自ら締結した任意代理の委任契約に対して本人保護のための必要最小限の公的な関与(家庭裁判所の選任する任意後見監督人の監督)を法制化することにより,自己決定の尊重の理念に即して,本人の意思が反映されたそれぞれの契約の趣旨に沿った本人保護の制度的な枠組を構築しようとして制定されたのが任意後見法であるという説明となります(民事法情報No.160 P21~P22参照)。

 さて,例によって,条文を見ておきます。今日は,任意後見法(任意後見契約に関する法律)第1条と第2条1号です。第1条は,この法律の趣旨で,第2条1号は,任意後見契約の定義です。

(趣旨)
第1条 この法律は,任意後見契約の方式,効力等に関し特別の定めをするとともに,任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)
第2条 1号 任意後見契約 委任者が受任者に対し,精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し,その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって,第4条1項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めがあるものをいう。


第2条1号を読めば,任意後見監督人の存在がとても重要であるということが理解されます。専門職後見人である司法書士の不祥事が報道される中,後見監督人の存在の重要性が意識されています。

なお,一般の人向けのパンフレット等をみると,事理弁識能力の用語は使われることなく,判断能力と言い換えられ,その精神上の障害という用語を使用しないものが多いようですが,条文から出発すべきと考える私としては,用語は,難しくても,基本的には,法律上の用語でということで,以下,書き続けます。


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任意後見制度 その1 [後見制度]

 私のこのブログの読者は,司法書士試験受験生の方が多いと思うのですが,最近,本職の方もかなりの数になるのではないかと,書いた記事に対するアクセス数と頂くメールなどから感じています。

 今日から,何回か書こうとしていることは,司法書士試験の受験勉強中で,司法書士試験に合格して司法書士になろうとしている人達に向けてのものです。本職の方には,特にリーガルサポートの会員の皆さんには,釈迦に説法のようなことを書くことになるのではないかと思われるのですが,ご勘弁を。できたら,こういうことも書けというメールでもいただければうれしいです。

 任意後見法(正式には,「任意後見契約に関する法律」(平成11年法律第150号)です)が成立・施行されてから,10年が経ちましたが,司法書士試験に出題されたことはまだありません。出題範囲にないとは思いませんが,出題されてきませんでしたね。法定後見制度については,多くはないものの出題されていますが(S56年19問,S59年20問,S60年17問,平成12年22問,平成14年20問,H15年4問等),任意後見制度はまだですね。合格すれば司法書士となって活躍するのだから,そして,先輩の司法書士が,この制度の発展のために頑張っているのだから(法定後見制度もですが),この制度発展の前提として,出題されることが望ましいと思います(今年どうでしょうね)。出題されれば,よく勉強すると思うのです。出題されないものだから,ほとんどの人は勉強していないのではないでしょうか。任意後見契約??何,それっていう受験生があちこちにいそうな気がするのですがね。

 試験科目から供託法をはずして,後見制度に関する出題(もちろん,任意後見だけでなく法定後見も含めて後見制度に関する出題ということです)とかいって独立の科目とするというのはどうでしょう。・・・言い過ぎでしょうかね。

・・・と今は,こう言っていますが,実は,素直に白状すれば,恥ずかしながら,私は,司法書士がこの制度にこのように深くかかわっていくとは思っていなかったのです。今を去ること10年と何カ月か前,任意後見法が成立したことから,私は,任意後見制度について,司法書士試験受験用参考書の改訂用の解説を書き始めましたが,その時点において,司法書士が任意後見受任者及び任意後見人となって,この制度に深くそして積極的に関わっていくとは思っていなかったのです。弁護士だろうなと思っていました。リーガルサポートは,平成11年12月設立だというのに・・・ですよね。恥ずかしながら。

 現行の任意後見制度については,いろいろな問題点も出ているようですが,研修会の講義を思い出しながら,書いていければいいなと思います,しかし,まずは,任意後見法が作り上げた仕組みをしっかりと理解しなければなりません。

定時株主総会の季節 最終回 [会社法いろいろ]

 見ていて,そうなのかと思ったこと。
 会計監査人の報酬等の金額に驚きました。驚いてはいけないのかもしれませんが。大大会社だからなのかもしれませんが,甲株式会社は,当社が支払うべき会計監査人としての報酬等の額105(単位百万円)・・・ということは・・・それから,当社および子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額309(単位百万円)・・・ということは,合計…。
監査報告書には,当該監査法人の指定社員 業務執行社員として,3人が記載されています。

 乙株式会社はホールディングスなのですが,①当事業年度に係る会計監査人としての報酬等の額 14,600千円 ②当社及び当社子会社が支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額 422,360千円 ③②のうち公認会計士法第2条第1項の業務に係る報酬等の額 421,268千円となっています。
監査報告書には,当該監査法人の指定有限責任社員 業務執行社員として4人が記載されています。

 丙株式会社は,というと,当事業年度に係る会計監査人としての報酬等 96百万円 当社および当社子会社が会計監査人に支払うべき金銭その他の財産上の利益の合計額 314百万円となっています。
監査報告書には,当該監査法人の指定有限責任社員 業務執行社員として3人が記載されています。

 3社の会計監査人は,有名な監査法人ですが,乙会社と丙会社は,同じ監査法人です。


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定時株主総会の季節 その8 [会社法いろいろ]

 代理人の員数の制限の問題です。
会社法310条5項は,「株式会社は,株主総会に出席することができる代理人の数を制限することができる。」としています。これは,通常は,複数の代理人によって議決権を行使することを認める理由はないこと,及び1人の株主が多くの代理人を総会に出席させて総会の運営を混乱させること(総会荒し)を防止する必要があるからです。上記の規定は,株式会社が代理人の数をあらかじめ制限していた場合にのみこれに株主が拘束されることを意味し,代理人の数を制限するためには,株主総会招集決定事項として定め(定款に定めがある場合は除く),招集通知に記載し,又は記録しなければならないとされています(会社法298条1項5号,施行規則63条5号,会社法299条4項)。

 さて,では,3社の招集通知を見てみましょう。
甲株式会社
なお,議決権を有する他の株主1名を代理人として株主総会にご出席いただくことが可能です。委任状を議決権行使書用紙とともにご提出ください。

乙株式会社
 議決権の代理行使につきましては,定款の定めにより,議決権を有する株主の方1名様に委任する場合に限られておりますので,ご了承ください。

丙株式会社
 探しましたが,みつかりません。なお,探している途中で,招集通知の方に,インターネット等により複数回,議決権を行使された場合は・・・となっているのを発見しました。

 このほか,気になることもいくつかありますが(特に計算書類),このあたりで,定時株主総会について終了ということに・・・,そう言いながら,見ていて,会計監査人の報酬で,驚いてしまったというか,知らなかったもので,そのことについて明日書くことにします。もう一回続きます。

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定時株主総会の季節 その7 [会社法いろいろ]

 議決権の代理行使の問題です。

 釈迦に説法的なところから入ります。
 株主は,代理人によってその議決権を行使することができるとされています(会社法310条1項前段)。これは,株主の議決権の行使を容易にし行使の機会を保障するためです。株主の出席による自らの行使が困難な場合もあり,これを強制すると,議決権の行使を事実上奪うことにもなりかねず,また,株式会社では,持分会社の社員と異なり,株主は個性を有しない建前であるから,株主自身の出席を強制する必要もないからですね。

 問題となるのは,代理人の資格の制限です。多くの株式会社では,代理人の資格を株主に限る旨の定款の定めが置かれているようです。会社法に制限することができる旨の規定が商法時代から置かれていないことから,この定款の定めが有効かどうかについて争われてきました。

 旧商法時代ですが,最高裁判所は,このような定款の規定は,株主総会が,株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し,会社の利益を保護する趣旨に出たものと認められ,合理的理由による相当程度の制限ということができるとして,旧商法239条2項に反せず有効であるとしています(最判S43.11.1,最判S51.12.24)。登記先例は,これに従い有効説に変更されました(S44.3.6第381号)。そこで,この判例及び先例のもとで,株式会社は,このような定款の規定があれば,原則として,株主でない者が株主の代理人として議決権を行使することを拒むことができることになります。

 手許にある3社はどうか。定款を見ていませんが,招集通知の記載から,いずれも,株主に限っていると推測されます。

 それから,株主が代理人によって議決権を行使する場合には,その株主又は代理人は,代理権を証明する書面(委任状)を株式会社に提出しなければならないとされている点を注意しておきます(会社法310条1項後段)。これは,委任による代理人について,代理関係の有無を明確にし,株主総会における決議の成否を円滑にするためです。なお,株主又は代理人は,この代理権を証明する書面の提出に代えて,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供することができ,この場合において,当該株主又は代理人は,当該書面を提出したものとみなされるとされています(会社法310条3項)。

 以下,明日に続きます。代理人の員数の制限の問題と3社の議決権の代理行使に関する招集通知の記載についてです。

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定時株主総会の季節 その6 [会社法いろいろ]

 電子投票の重複ですが,これはありそうです。簡単にできますからね。会社側にとってはうれしいことではないと思いますが。株主総会の招集通知を発して,株主総会が開催される前に,不祥事が起こった場合等,投票を変更したくなります(役員改選のときは特にそうです)。
書面投票はどうでしょうか。書面投票が重複する場合がそもそもあるのかです。ないと思って,「定時株主総会の季節 その2」http://bit.ly/dymdqs では,最初,ないだろうと書きました。どうしてかというと,はがき(議決権行使書面)が1枚しか入っていないからです。しかし,その後,その部分を書き換えました。

 というのは,会社法施行規則63条3号ヘを改めてきちんと読んだからです(読みにくいというか読むのが面倒)。みんなで読めばこわくない・・・面倒でない??

 ヘ 一の株主が同一の議案につき次に掲げる場合の区分に応じ、次に定める規定により重複して議決権を行使した場合において、当該同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なるものであるときにおける当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項を定めるとき(次号に規定する場合を除く。)は、その事項
(1) 法第298条第1項第3号に掲げる事項を定めた場合 法第311条第1項
(2) 法第298条第1項第4号に掲げる事項を定めた場合 法第312条第1項

 会社法298条1項は,株主総会を招集する場合に決定すべき事項を定めていますが,その3号というのは,「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは,その旨」書面投票です。4号は,「株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは,その旨」電子投票です。それで,会社法311条第1項というのは,「書面による議決権の行使は,議決権行使書面に必要な事項を記載し,法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。」,会社法312条第1項というのは,「電磁的方法による議決権の行使は,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,法務省令で差定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を,電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。」

読むのが面倒だったかもしれませんが,つまり,株主が重複して書面による議決権を行使した場合,及び株主が重複して電磁的方法による議決権の行使をした場合について,株主が書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使をした場合についてと同様に,その取扱いに関する事項を定めてそれを議決権行使書面か招集通知に記しておくことができることとしているわけです。つまり,それぞれ招集者が定めることができるのだよというわけです。
会社法施行規則は,書面投票が重複して行われることを想定しているのです。普通はないと思うのですが・・・。

 さて,では,手許にある3社の招集通知あるいは議決権行使書面は,何か書いてあるでしょうか。

甲株式会社
インターネットによって,複数回,議決権を行使された場合は,最後に行われた行使を有効として取り扱わせていただきます。
書面投票を重複して行使した場合については,記載がありません。

乙株式会社
インターネットによって,複数回数,議決権行使をされた場合は,最後に行使されたものを有効な議決権行使として取り扱わせていただきます。
書面投票を重複して行使した場合については,記載がありません。

丙株式会社
インターネットにより2回以上議決権を行使された場合は,最後に行われたものを有効な議決権行使として取り扱わせていただきます。
書面投票を重複して行使した場合については,記載がありません。

いずれも,同じですね。

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真弓です。仕事場の庭にあります。

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定時株主総会の季節 その5 [会社法いろいろ]

 招集者が,書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使とを重複して行使した場合の取扱いについて,会社法施行規則を読んでよく知った上で,議決権行使書面又は招集通知に記していれば問題はないのですが,知らずに,あるいは条文を読まずに,この点について,何ら記していなかった場合はどうでしょう。

 ありそうですね。

 この点については,解釈論となるわけで,支配権の争いが起こったときに,こういうことがあれば,大変でしょうね。神田先生は,後に到着した投票が優先するという見解のようです。浜田先生は,株主が後に発したことが明らかな投票を有効と扱い,先後関係が不明であれば,いずれの投票も認めないのが適切であろうとされています(逐条解説会社法第4巻P152)。

 電子投票は,インターネットを使うわけですから,瞬時に到達します。はがきを出した場合には,瞬時というわけにはいきません。はがきで第1号議案について賛に○をつけて出したが,その夜,考えが変わって,否として電子投票をしたという場合も当然あるでしょうから,それでも,後から到達したはがきによる議決権の行使が有効というのは不合理かなと思えます。浜田先生の見解が妥当かなと私は思いますが,どうでしょう。

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夏は,朝顔とひまわりが好きです。

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定時株主総会の季節 その4 [会社法いろいろ]

 書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使が可能である場合に,書面による議決権の行使をした後に電磁的方法による議決権の行使をすることができるか(逆の場合もありますね),現実に重複して議決権を行使した場合に,その内容が異なったとすると(一方が賛成で他方が),どちらが議決権の行使として有効か。

 あるのでしょうか,こういうことが。施行規則にこれに関する規定があるのですが,施行規則に規定しなければならないほどまでにあるのでしょうか。電磁的方法による議決権の行使(電子投票)は,簡単にできるから,あるということなのでしょうね。

 できるかできないかという問題設定をしてしまいましたが,常識的に考えれば,株主にとってみれば,どちらか一方だけが認められればよいという性質のものですから,できるかできないかという問題設定であれば,できないと言うべきではないかと思います(それで株主の保護もしくは権利としては充分だからです)。両方認める必要はありません。しかし,できないと言ってみても,問題となるのは,実際に行われてしまった場合に,その内容が異なるときに,どちらを有効とするかです。

 会社法施行規則は,このように書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使が重複することがあることを想定して,議決権の行使の内容が異なるものであるときに備え,その取扱いに関する事項を定めてそれを議決権行使書面か招集通知に記しておくことができることとしています(施行規則63条4号ロ,66条1項3号,3項,4項)。つまり,それぞれ招集者が定めることができるのだよというわけです。

 会社法施行規則63条4号ロは,次のとおりです。
 「一の株主が同一の議案につき法第311条第1項又は第312条第1項の規定により重複して議決権を行使した場合において、当該同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なるものであるときにおける当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項を定めるときは、その事項」

 手許にある3社はどうしているでしょう。まず,議決権行使書面あるいは招集通知に記載しているかどうか。どのように記載されているか。

甲株式会社 
 記載されています
 「議決権の行使は,お手許の議決権行使書用紙による郵送にて議決権を行使する方法,または当社の議決権行使サイトによる方法のいずれか一方によってのみ行使することができます。双方で行使することのないようご注意ください。
なお,双方で行使された場合は,インターネットによる議決権の行使を有効とさせていただきます。」

乙株式会社
 記載されています。
「書面とインターネットにより,二重に議決権を行使された場合には,インターネットにより行使されたものを有効な議決権行使として取り扱わせていただきます。」

丙株式会社
 記載されています。
 「インターネットと議決権行使書用紙の双方で議決権を重複して行使された場合は,後に到着したものを有効な議決権行使として取り扱わせていただきます。なお,同日に到着した場合は,インターネットによる議決権行使を有効なものとして取り扱わせていただきます。」

 以上3社をくらべてみると,甲株式会社と乙株式会社は,電子投票優先です。したがって,例えば,6月20日にはがきを出して, 6月21日に電子投票をして会社がこれを即時に受領した後,はがきが6月21日に到着したという場合でも,電子投票の方が有効となります。しかし,同じ例で,丙株式会社では,書面投票の方が有効となるという逆の結論となります。

 招集者がこのような場合について議決権行使書面又は招集通知に記していれば問題はないのですが,何ら記していなかった場合はどうか。電子投票が重複して行われたときはどうかについては,次回とします。

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定時株主総会の季節 その3 [会社法いろいろ]

 株主が書面による議決権行使書面を送付した場合であっても,当該株主は,株主総会に出席して議決権を行使することができるか。同様に,株主が電磁的方法により議決権を行使した場合であっても,株主総会に出席して議決権を行使することができるか。

 結論からです。できます。この点については,明文の規定はありませんが,会社法298条1項3号及び4号は,「株主総会に出席しない株主が書面によって・・・電磁的方法によって」と規定してあります。書面投票及び電子投票は,株主総会に出席しない株主のためのものであり,いったん書面投票・電子投票をしたからといって,本則である株主総会に出席して議決権を行使することを否定することはできません。理論的には,まだ議決権行使の効果は発生していないわけですから,禁止規定がないかぎり,撤回(取消しではありません)することができますが,株主総会への出席は,この撤回とみることができます。

 株式会社側は事務処理上厄介かもしれませんが,株主総会に出席しての議決権の行使が本則です。なお,書面による議決権の行使の場合には,議決権行使書をポストに入れてしまって手許に残りませんから,受付けで,その旨を告げて会場に入ることができることになると思われます(株式会社側は,当該株主が書面投票をしているかどうか,照合するのだと思いますが,何らかの証明を要求するでしょうね)。電子投票の場合には,手許に残りますから,それを持って株主総会に出かけることになります。

 以上の点につき,今手許にある3社の招集通知にどこかこれに関する記載があるかなと思ってみましたが・・・・どう思います?見当たりませんね。そりゃ,記載しませんよね。

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自宅入口

定時株主総会の季節 その2 [会社法いろいろ]

 昨日からの続きです。書面による議決権の行使(書面投票)と電磁的方法による議決権の行使(電子投票)の手続等について,会社法及び会社法施行規則がどういう規定を置いているか,会社法施行規則のもとで,実際にはどのようにおこなわれているのだろうかということです。

 招集通知及び議決権行使書をみて考えた問題としては,以下のものがあります。

 第1に,議決権の行使の期限の問題です。いつまでに行使しなければならないか。会社法及び会社法施行規則はどのように規定しているか。

 第2に,株主総会当日は都合が悪くて出席できないと考えたため,書面による議決権の行使をしたが(議決権行使書面(はがき)の賛否の欄に○で印をつけて送った),都合がついて,株主総会に出席できることになったのだが,さて,出席して議決権を行使することができるだろうか。これは,電磁的方法による議決権を行使したときも同じことが言えます。

 第3に,ほとんどの(おそらく)上場会社では,電磁的方法による議決権の行使を認めていると思われますが,書面による議決権の行使をした後に電磁的方法による議決権の行使をすることができるか,あるいはした場合に,どちらを議決権の行使として認めることにするか。同じであればいいけれど,違う場合にどうなるかですね。

 第4に,書面による議決権の行使の場合には,招集通知の封筒の中には,はがきが1枚しか入っていませんから,2度行使するということは実際上は難しいのではないかと思われますが,電磁的方法による議決権の行使の場合には,何度でもできそうですね(技術的には,一度行使すればできないというシステムを組むことも可能だと思いますが),期限内であれば何度でもできるのか(例えば,いくつかの議案について,賛成の投票をしたのだが,その後,反対しようと考えたとき変更できるのか)。

書面による議決権の行使及び電磁的方法による議決権の行使は,いつまでにしなければならないか。

条文は,会社法311条1項,311条2項,と会社法施行規則69条,70条です。

 「書面による議決権の行使は,議決権行使書面に必要な事項を記載し,法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を会社に提出して行う。」(会社法311条1項),「電磁的方法による議決権の行使は,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を,電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。」(会社法312条1項)。法務省令に委任してますね。

 法務省令である会社法施行規則は,書面による議決権行使の期限として,会社法311条1項に規定する法務省令で定める時は,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時であるとし,招集の決定事項として「特定の時」をもって書面による議決権の行使の期限とする旨を定めるときは,その特定の時としています(施行規則69条)。電磁的方法による議決権行使の期限も同様です(施行規則70条)。

 まず,原則ですが,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時までに議決権を行使しなければならないとなっています。これは,集計作業の実務上の負担に配慮したものであると言われています(逐条解説会社法第4巻 P152参照)。旧商法は,「総会ノ会日ノ前日マデニ」となっていました。つまり,前日の24時までにということだったのです(旧商法239ノ2第5項,239条ノ3第5項)。

 会社法施行規則は,招集者が何も定めないのであれば,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時までであるが,株主総会の招集にあたって,招集者は,「特定の時」をもって期限とすることができるものとしています。ただし,その「特定の時」は,株主総会の日時以前の時であって(これは,当たり前のことですね),会社法299条1項の規定により通知を発した時から2週間を経過した時以後の時に限定しています(同括弧書,ぎりぎりで招集通知を出すと,原則通りになってしまう可能性が高い)。

 さて,実務はどうなっているでしょう?私は,ほとんどの株式会社が,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時よりも前の「特定の時」を定めると思っていました。集計作業で間違えないように時間のゆとりがほしいと思うだろうと。

 手許にある3社の議決権行使書あるいは招集通知は,次のようになっています。

甲株式会社
定時株主総会 6月23日(水曜日)
議決権行使書のはがきの表の切り取り線の下には,「6月22日(火曜日)午後5時30分までに到達するようにご返送ください。」と記載されています。
また,招集通知に,「インターネットによる議決権の行使は,平成22年6月1日(火)から平成22年6月22日(火)午後5時30分までに行使されるようお願いいたします。なお,毎日午前2時から午前5時まではお取り扱いを休止します。」との記載があります。
書面投票と電子投票は,基本的に同じ取扱です。

乙株式会社
定時株主総会 6月28日(月曜日)
はがきの表 切取線の左 「議決権行使書をご郵送の際は,この部分をお切り離しいただき,平成22年6月26日17時30分までに到着するようご投函ください。」とあり,裏には,「議決権をインターネットで行使される場合は,・・・平成22年6月27日24時までにご投票ください。この場合,議決権行使書を返送される必要はありません。」とあります。
書面投票と電子投票とで異なりますね。

丙株式会社
定時株主総会 6月29日(火曜日)
はがきの裏 切取線の右 「1.株主総会にご出席願えない場合は,この議決権行使用紙に賛否をご表示いただき,平成22年6月28日午後5時までに到着するようご返送ください。」「4.議決権をインターネットで行使される場合は,・・・平成22年6月28日午後5時までにご投票ください。この場合,議決権行使書を返送される必要はありません。」とあります。

せっかく会社法施行規則が特則を設けているのですから,すくなくとも,2,3日は余裕をおくのではないかと思っていましたが,違いました。3社しか見ていませんから,一般的に,どうなのかわかりませんが,しかし,他の上場会社もおなじなのだろうなという気がします。

乙株式会社の場合の前日の24時までというのは,意外ですね。ぎりぎりで行使してくる株主がどのくらいいるかの話になるでしょうが,徹夜するのかな?それとも・・・。

第4に・・・の文章について,修正を行いました。6月10日17時05分


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常盤公園

定時株主総会の季節 [会社法いろいろ]

 株主総会の招集通知が一昨日から届き始めました。一昨日は,3社ほどです(何社もの株式をもっているわけではありません,念のため)。いずれも,みなさんご存知の大会社です。机の上に3社分のものを広げたら,これに関連して何か書いてみようという気になりました。

 第1頁目は,第○○回定時株主総会招集(の)ご通知となっています。一つは,第157回,一つは,第12回,一つは,第8回です。三つ目の株式会社は,回数が少ないですが,持株会社です(だから回数が少ないのですね)。8年前が第1回であるわけですが,株式交換・株式移転制度創設(改正法は,平成11年8月13日成立,同年10月1日施行)によって,完全親会社になったということでしょうね。二つめは,新設合併だったのかな?

 開催日時は,6月23日(水曜日),6月28日(月曜日),6月29日(火曜日)とばらばらですね。かつて一斉に同じ日だったと思いますが,近年は,ばらばらなのでしょうか。それでも,上場会社のほとんどは,事業年度の末日(決算期)が3月31日でしょうから,この6月の下旬なのでしょうが,集中する日があるはずですよね。何日が一番多いのでしょうか。6月29日かな?

上場会社ですから,公開会社で,招集通知は,2週間前までに発しなければなりませんが(会社法299条1項),ゆとりで発送しています。

 3社とも株主が1,000人以上ですから(大きな会社ですからね,当たり前のことばかり書いていますが…),書面投票制度(書面による議決権の行使)の採用が強制されていますので(会社法298条2項),はがきが入っています。議決権行使書と印刷してあります。議決権行使書面です。電子投票はとなると,これは,任意採用ですよね。しかし,大会社ですから,それぞれ,採用しています。いまどき・・・というところでしょうか。それぞれ議決権行使書面と同一のものにミシン目が入って,切り取れるところに,その中の一つの株式会社では,お願いの項目の最後のところに,「議決権をインターネットで行使される場合は,下に記載のウェブサイトに議決権行使コードとパスワードによりアクセスのうえ,平成22年6月28日午後5時までにご投票ください。この場合,議決権行使書を返送される必要はありません。」とあって,議決権行使ウェブサイトのアドレスと議決権行使コード,パスワードが印刷されています。この株式会社は,定時株主総会は,6月29日です。

 さて,書面による議決権の行使も,電磁的方法による議決権の行使も,いつまでにしなければならないかの問題があります。会社法は,「書面による議決権の行使は,議決権行使書面に必要な事項を記載し,法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。」(会社法311条1項),「電磁的方法による議決権の行使は,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を,電磁的方法によって当該株式会社に提供して行う。」(会社法311条1項)とされています。法務省令は,会社法施行規則69条と70条です。読んでおいてください(例によって括弧書があるので,この際きちんと読みましょう。63条もです)。

 このつづきは,明日ということにします。

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庭にたくさんあります。レモンタイム。よく車で踏んでしまうのですが,いいにおいを発します。

Check Test 会社法№75 [Twitterから]

昨日(6月7日)の司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法№75です。http://bit.ly/cOP9Z7

「発起設立の場合と募集設立の場合とで,不足額てん補責任の要件が異なる。○か×か。」

発起設立と募集設立について最終回としたのですが,Check Testがその箇所に来ましたので,「会社法いろいろ」での発起設立と募集設立は最終回だったということで(言い訳でしょうか…)解答・解説ということにしました。平成20年の司法書士試験に,関連問題が出ていることですしね(H20年午前の部 第28問イ)。

解答・解説
○です。
株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が当該現物出資財産等について定款に記載され,又は記録された価額(定款の変更があった場合にあっては,変更後の価額)に著しく不足するときは,発起人及び設立時取締役は,当該株式会社に対し,連帯して,当該不足額を支払う義務を負うこととされています(会社法52条1項)。これを不足額てん補責任とか財産価格てん補責任といいます。この責任は,発起設立と募集設立の場合とで,過失責任か無過失責任かという点で異なります(表を作っておきたいところです)。

発起設立の場合においては,当該財産の現物出資者又は財産引受けにおける譲渡人以外の発起人及び設立時取締役については,立証責任の転換された過失責任とされていますが(当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には責任を負わない,同条2項2号),募集設立の場合においては,無過失責任とされ(会社法103条1項),当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明しても責任を免れないこととされています。

どうしてでしょうか。江頭「株式会社法第3版」P108から引用します。「募集設立においては,現物出資等の目的財産の価額が定款に定めた価額に著しく不足すると,設立時募集株式の引受人が実質的な不公平により損害を被ることから,発起人・設立時取締役の全員に無過失の連帯責任を負わせたものである」。設立時募集株式の引受人の保護というわけです。比較して理由も覚えておくと記憶に長くとどまる論点です。

なお,現物出資及び財産引受けの手続に際して裁判所選任の検査役の調査を経た場合には,当該財産の現物出資者又は財産引受けにおける譲渡人以外の発起人及び設立時取締役は,不足額てん補責任を負わないとされていますが(会社法52条2項1号),これは,公正な第三者の調査を経ている場合にもてん補責任を負わせるのは酷だからです。

さて,司法書士試験平成H20年午前の部 第28問イです。

「募集設立における発起人は,会社の成立の時における現物出資財産等の価額が定款に記載された価額に著しく不足する場合であっても,当該発起人がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すれば,不足額を支払う義務を免れる。」
×ですね。比較の上,理由も押さえるということで記憶が確実になります。

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淡竹 破竹? 裏の山の斜面です。
今年は,よくできました。

発起設立と募集設立の最終回 [会社法いろいろ]

 発起設立と募集設立をテーマにしてまだまだあるのですが,そろそろこれで最後にしようということで,その最終回として,2つほど。募集設立を存続させたために浮上した問題ではないかと私が考えるものです。

 最初は,発起設立によるか募集設立によるか,発起人は,これをいつまでに決めなければならないのかという問題です。原始定款の認証を受ける時まででしょうか,あるいは,その後の設立手続に入る時まででしょうか(例えば,会社法32条所定の設立時発行株式に関する事項の決定の時),これと連動するのですが,発起設立の手続で株式会社を設立することにして,設立手続を開始したが,その後,募集設立に変更することができるか。

 会社法の条文を見渡しても,いつまでにということは書いてありません。もちろん,設立時発行株式を引き受ける者の募集をして,引き受けた者が出資の履行をして・・・となるともはや発起設立というのはないのでしょうけどね。
 そこで,発起設立にするか募集設立にするか定款で定めて設立手続を開始することも,もちろん可能だけれど,その必要はない。通常は,設立時株式の決定事項を定める時に決定することになるのだろうと思います(実際は,株式会社を設立しようと思った時から,決まっていることだと思いますが,ここでは,決定のリミットの問題です)。発起人の出資の完了後でもいいと解されています(論点解説 新・会社法P26参照)。出資の完了後でもいいとなると,資金が足りないなということになったときに,募集して資金調達することが可能となります。つまり,発起設立で出発して,問題なく,募集設立とすることができるということです。旧商法時においては,このようにフレキシブルではなかったように思います。

 問題は,その次ですが,定款で取締役等を定めることができるかどうかです。旧商法時においては,実務では,発起設立においては許されるが,募集設立においては許されないと解されていました(商事法務No.1298 P38,実務相談1 P176参照)。通説もそうだったのではないでしょうか。募集設立は,発起人以外に株式引受人がいるから発起人だけで選任することはできず,創立総会で選任するのだというのがその理由です。

 では,会社法のもとではどうか。まず,発起設立においては,定款で設立時役員等をさだめることができることは,条文上の根拠があると言えます。会社法38条3項ですね。「定款で設立時取締役,設立時会計参与,設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は,出資の履行が完了した時に,それぞれ設立時取締役,設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。」定款で設立時役員等を定めることができることが前提となっています。では,募集設立ではどうか。規定がありません。

 私は,募集設立を存続させた以上,その違いも存続するだろうと考えたということもありますが,発起設立にある規定が募集設立においてはないということから,これまでどおり,募集設立においては,定款で設立時役員等を定めることはできないだろうと考えました。ところが,立法担当官は,募集設立の場合にも許されるという見解を表明しました(登記情報540号 P16~P17)。その理由は,募集株式の引受けにより株主となる者に定款の内容を知る機会が与えられる上に,創立総会の決議によって定款の内容を変更することもできるというものです(同P16)。この見解が民事局の見解であると考えられます。

 旧商法時代の実務では,定款で取締役等を定めると,それは,発起設立であるということだったのですが,会社法のもとで上記の見解によれば,いくら設立時役員等が定款で定められていようとも,いずれであるかは,その後の手続によって判明するということになります。


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奈良の大仏様のふるさと
近くに銅山があってここから採れた銅を使って東大寺の大仏様を作ったのだそうです。
銅山跡は,自宅から車で15分か20分くらいのところにあります。

発起設立と募集設立 その4 [会社法いろいろ]

 会社法は,株式会社の設立の方法として,発募集設立の方法を存続させることにしました。これにより,依然として,両者の異同,比較が問題となります。もちろん,募集設立の方法を存続させて,発起設立と募集設立の方法の二つの方法があるということですが,だからと言って,これまでと全く同じではなく,各所に改正が加えられています。

 その中の一つ,払込取扱銀行等の払込金保管証明責任について,実は,これが,今回のシリーズのテーマだったのです。平成2年商法改正後,平成17年会社法成立まで,発起設立においても,募集設立においても,払込みは,発起人が定めた払込取扱金融機関(以後,払込取扱銀行等)でしなければならないことになっていて,その銀行等は払込金保管証明責任を負わされたのでした。これは,払込みの仮装を防止し,出資の履行を確実にするというのがその理由でした。

 このように,発起設立であっても,銀行等との間で銀行等が払込取扱銀行等となる委任契約をして,手数料及び報酬を支払わなければならなかったのです。銀行等が払込取扱銀行等になってくれた上で,ということで,費用がかかることはもちろん,時間もかかります。

そこで,会社法は,発起設立について,払込みについて,発起人の定めた銀行等の払込み取扱場所においてしなければならないという点において,払込みの仮装を防止し,出資の履行を確実にするということを実現しようとするのですが(会社法34条2項),銀行等の払込金保管証明責任については,廃止しました。

しかし,募集設立においては,この銀行等の払込金保管証明制度を存続させました。立案担当者は,どう説明しているでしょうか。

 「なお,会社法では,このように,発起設立の場合と募集設立の場合とで規律に差異を設けているが,これは,①株式会社の設立手続の遂行主体である発起人のみが出資者である場合には,出資者自身が,その出資された財産の保管に携われることから,特段の措置を設ける必要がないのに対し,②設立手続の遂行主体でない者が出資する場合であって,かつ出資の対象である株式会社がいまだ法主体としては成立していない状況にある募集設立においては,出資者が出資した財産の保管状況を明らかにする払込保管証明制度を維持することが相当であるためである。」(立案担当者による新・会社法の解説P18)

 「募集設立の場合には,いまだ会社が成立しておらず,また,設立事務に直接関与しない設立時発行株式の引受人が存在することから,そのような引受人の出資金が発起人等に不当に流用されないようにするため,払込金保管証明制度(64条)がなお維持されている。」(論点解説 新・会社法P29)ストレートに書いてあります。

 というわけで,立案担当者の見解では,払込金保管証明制度は,設立時発行株式の引受人だけの保護の規定だということです。設立された株式会社のためでなく,債権者のためでなくのように読めます。発起設立の場合には払込金保管証明制度はないのですから,そう説明せざるを得ないということでしょうか。前二者は,払込取扱銀行等の規制で賄っているということになりますね。

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小野茶

発起設立と募集設立 その3

 会社法制の現代化に関する要綱試案では,株式会社の設立手続を発起設立に一本化するという方針を立てたのに,会社法は,募集設立の方法を存続させることとしました。

 ということは,要綱試案の(注)にあった「実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」からきたものということになりますね。もっとも,「実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」は,「募集設立を廃止することに伴い,発起設立に関して見直すべき点があるかどうかについて,」につづくものです。「発起設立について見直すべき点があるかどうかについて」ですから,発起設立に一本化するというのは,前提のように読めます。

 ともあれ,募集設立を存続させたのは,「現在の実務において募集設立が用いられる可能性が皆無ではなく,設立当初から発起人としての責任を負わない形で出資者になることについてニーズが否定できないということもあり,結局,募集設立の方法も維持することとされ,・・・」という説明がされることになりました(立案担当者による新・会社法の解説P14~P15)。

 この「ニーズを否定できない」ということが,要綱試案補足説明のいう「試案では,募集設立に対する利用のニーズが減少していること,会社法制の現代化に当たり規定の簡素化・明瞭化を図るべきであること等の点を踏まえ,募集設立という方法を廃止し,発起設立という方法に一本化することとしている。」(旬刊商事法務No.1678 P47)からして,「規定の簡素化・明瞭化を図る」よりも,価値的に上であると位置づけられたことになります。果たして,会社法のもとで,どれだけ募集設立によって株式会社が設立されているか,それは,どのような株式会社か,資料がほしいところです。

 なお,要綱試案補足説明中に,「なお,募集設立を利用するニーズの主なものとして,設立手続における発起人と株式引受人との責任・義務・地位等の違いから,設立時点での株式会社に対する資金提供者とはなるものの,発起人としての責任を負わないことを望む者が存在するという指摘があるが,部会においては,このようなニーズに対しては,設立と同時に株式の譲渡を行うことにより対応が可能ではないかという意見が出された。」との記述があります。

また,立案担当者による新・会社法の解説P14では,「なお,法制審議会会社法(現代化関係)部会における会社法制の現代化の検討過程においては,・・・・中略・・・発起設立の方法に一本化することも検討された。特に,会社法においては,株式会社の最低資本金制度が廃止されることから,少額の出資による発起設立をした直後に株式を引き受ける者を募集することにより,募集設立と実質的には同等の結果が得られることにかんがみると,募集設立を維持することに特段の意味はないとも考えられたためである。」という記述があります。

 このようにして,募集設立が存続となったことから,依然として,発起設立と募集設立との比較が重要な問題となっています。どこが,違うかですが,もちろん,理論的には,核は,設立時発起人以外の設立時募集株式の引受人の存在,その保護となります。

 その中のひとつ,払込取扱銀行等の保管証明責任に,次回,戻ることにします。

発起設立と募集設立 その2 [体系書 会社法]

 平成2年の商法改正において,発起設立の手続の改正が行われました。立法担当官の著「改正会社法」では,設立手続の合理化として,発起人の員数,最低資本金制度につづき,「発起設立における検査役の調査の廃止と株式の払込取扱機関の介在」という項目が挙がっています。

 えっ発起設立においては検査役の調査は,平成2年の改正によってなくなっていたのか・・・。そうではありません。調査の対象の問題です。それまで,発起設立においては,変態設立事項だけでなく,払込み及び現物出資の給付の有無についても,裁判所に検査役の選任を請求して,検査役の調査を受けなければならなかったのですが,これを廃止したのです。払込み及び現物出資の給付の有無について検査役の調査を要するとするのは,払込取扱銀行等において払込みをしなければならないとはされていなかったことと対になっていました。そこで,同時に,募集設立だけでなく,発起設立においても,払込取扱銀行等においてしなければならないとされました。

そして,同時に,払込取扱銀行等の払込金保管証明についても,それまでは,募集設立についてのみ適用があったのですが,この改正により,発起設立においても適用があることとされました。

 さて,会社法はどうなっていますか?払込取扱銀行等への払込みという点については,募集設立と発起設立とで違いはありませんよね。では,払込取扱銀行等の払込金保管証明制度についてはどうでしょうか? そうです。募集設立の場合だけとなっています(会社法64条)。この払込金保管証明制度の点においては,平成2年の商法改正前に戻ったことになります。

 発起設立において,上記の改正をした理由は何か。それは,多くの場合,発起人以外の者から出資を募集することはないだろうから,株式会社を設立するには募集設立の方法よりも発起設立が適当である・・・にもかわらず,それまで,発起設立の利用が少なかった・・・どうしてだろう・・・。それは,発起設立の手続によれば,変態設立事項がなくても,かならず裁判所に検査役選任の請求をしてその検査を受けなければならない,時間がかかる(費用もかかる),迅速に設立できない・・・これが原因ではないか・・・。発起設立を利用されやすいようにするべきであるが,どうすればよいか,上記の検査役の調査を廃止するのがよい,しかし,出資の履行を確保する必要がある・・・払込取扱銀行等においてということにしよう・・・というわけです(現物出資についても他の方法による給付の確保に関する一定の手当てがされました)。

 このような改正が行われた結果,さて,会社法制の現代化に関する要綱試案を作成する段階において,株式会社の設立の方法としては,「募集設立に対するニーズが減少している」(会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明)ということになりました。

 「会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明」において,株式会社の設立方法を発起設立に一本化する理由として,次のように述べられています。

 「・・・募集設立に相当する設立手続がない有限会社と株式会社との規律を一体化するに当たり,両者の差異をどのように調整するかが問題となる。
 さらに,発起設立と募集設立という二つの設立手続に関する規定が設けられているため,株式会社の設立手続は極めて複雑で分かりにくい規定となっている。
 試案では,募集設立に対する利用のニーズが減少していること,会社法制の現代化に当たり規定の簡素化・明瞭化を図るべきであること等の点を踏まえ,募集設立という方法を廃止し,募集設立という方法に一本化することとしている。」

 というのですが,しかし,会社法は,募集設立の方法を存続させました。なぜなのでしょうか?次回です。

平成2年の商法改正 寄り道ですが・・・発起人の員数 [会社法いろいろ]

 発起設立と募集設立についての稿なのですが,平成2年の商法改正にふれるので,見ていたら,書く気になりました。寄り道ですが・・・。

平成2年の商法改正は,重要な事項の改正をいくつも行っているのですが,第一に思い出すのは,株式会社における発起人の員数の規制の撤廃でしょうか。それまで,株式会社の設立には,7人以上の発起人を要するものとされていました。発起人は,必ず,株主になりますから,株式会社の設立当初は,株主は,最低7人(発起設立)か8人(募集設立)でした。この規制を撤廃して,現在のように,発起人は,1人で構わないとしました。これによって,会社の設立の当初から,株式会社において,一人会社が認められるようになったのでした。

発起人について,一定の員数を要求したのは,株式会社の設立の確実を期すためで,7人以上としたのは,そのための適当な数がそのあたりということでしょうね(「7人の侍」ですね)。では,その規制の撤廃の理由はどこにあったのでしょうか。立法担当官は,次のように書かれています(大谷禎男著「改正会社法」P33)。

「しかし,わが国の株式会社の多くは,個人企業の法人成りの形で設立されており,この場合に,企業主は,通常,法人成りを機に他人の参加を得て共同企業としたいとの意図を持っているわけではない。会社が企業分割的な子会社の設立を企図する場合も同様である。このような会社設立の実態に照らすと,旧法165条は,多くの場合に,建前を整えるためだけの操作を強要していたことになる。
しかも,発起人の員数の規制は,名目的な発起人を用意することによって容易に満たすことが可能であり,したがって規制としての実質的な機能はほとんどなく,かえって法律を軽視する風潮を助長しかねない。また,名目的な発起人が置かれる結果,後に発起人の責任追及や権利の帰属をめぐる無益な法律紛争を惹起するというような弊害もある。」
これに続けて,「会社債権者の保護は,発起人の員数の規制によるよりも,相当額の危険資本の拠出の確保と発起人および最初の取締役の責任の強化,さらには会社財産の個人財産との分別管理の徹底によって賄う方が合理的である。」と書かれています。

横道にそれました。次回は,発起設立に関する平成2年商法改正についてです。


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仕事場の庭

発起設立と募集設立 その1 [会社法いろいろ]

 今を去ること何年前になるでしょうか。平成15年10月22日に法制審議会会社法(現代化関係)部会は,会社法制の現代化に関する要綱試案を発表しました。それから,かなり早い時期だったと思いますが,説明会が開催されたので聞きに行きました。どこであったのか,はっきりとした記憶がありません。平成2年の商法改正以来,改正に係る法制審議会部会長や立法担当官による説明会や講演会,パネルディスカッション等できるかぎり聞きに出かけて行くようにしていたのですが,会場がいろいろなところであったため,どこの会場だったか,情けないことに,特定できません(九段会館?)。もっとも,会場はどこでもいいのですが,壇上に立たれたのは,江頭先生であったという記憶は,はっきりしています。それまで,法制審議会の部会長として登場されるのが前田先生だったのですが,そのときから,前田先生から江頭先生に代わって,初めての説明会だったと思います。

 会社法制の現代化に関する要綱試案では,驚くことがたくさんありました。その中の一つが,株式会社の設立手続の方法を一本化し,発起設立だけにするというものでした。次のとおりです。

第四部 株式会社・有限会社関係 第二 設立等関係 3 募集設立 「株式会社の設立手続のうち募集設立という方法を廃止し,発起設立に一本化するものとする。」

今,この要綱試案を読み返してみれば,確かに(注)があって,(注)「募集設立を廃止することに伴い,発起設立手続に関して見直すべき点があるかどうかについて,実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」とあります。この(注)により,会社法は,募集設立を存続させたのでした。

 私は,この説明会の後,講義で何度か,商法が改正されれば,発起設立だけになりますと話したことがあります。今頃何を言っているか・・・ですが,取り消さなければなりませんね。しかし,説明会の時以後,ずっと,新しい会社法では,発起設立しかないと思い込んでいましたから。だから,講義で,商法が改正されれば,株式会社の設立手続の勉強は簡単になりますねと言ったのでした。

 ところが,会社法は,募集設立の手続を存続させたのでした。では,法制審議会は,なぜ,発起設立一本化の方針を立てたのでしょうか。平成2年の商法改正にさかのぼります。次回です。

 受験勉強に直結しないかもしれませんが,へ~昔はそうだったんだという感じで読んでもらえばいいと思います。それによって,現在がどうかきちんと記憶にとどまるのではないでしょうか。また,本職になってから,制度改正を考えるときに,もしや役に立つかもしれません。


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常盤公園内 翡翠葛 (ヒスイカズラ)


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