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「司法書士試験 受験生のためのCheck Test 会社法」の再開 [Twitterから]

 8月2日より,「司法書士試験 受験生のためのCheck Test 会社法」を再開しようと思います。長い間のお休みをいただきました。

 本年度の司法書士試験筆記試験を受験されたみなさんは,合格間違いなしと確信されている方は別として,来年合格を期すと決意された方だけでなく,そうでない方も,すでに勉強を再開されていることと思いますし(していなければ早く),長年,「1年は短い,疲れが取れたら,すぐに来年に向けて勉強を再開しなければならない」と言い続けた私としても,合格を応援する私としても,いったん始めたtwitterでのCheck Testを再開しなければなりません。何より,継続は力なりですからね。

 再開は,7月2日分からの続きと当然のように考えていました。しかし,これからのYOUR PROJECTの計画をいろいろ考えていて,また,お寄せいただいた質問や要望等から,できるものであれば,基礎固め用(初級者用とは限りません),中級者用,上級者用,あるいは中上級者用と分けて,提供することがいいと実感するようになりました。

 そこで,基礎固め編と中上級編あるいは中級編,上級編に分け,まず,基礎固め編から,再スタートしようと思います。答えは,基本的に○×です。条文読みなさいよというときは,条文(第○○条第○項)を示します。解説したいなと思ったときは,このブログに書くことにします(これまで通りです)。

 「体系書 会社法」に従って,作成して行き,解答の際にその頁を示し,「体系書 会社法」を持っている方は,これに従って,読み進むことができるようにしたいと思います。問題編と解答編に分かれますが,解答編には,問題文を表示しません(表示すると140字の問題で面倒な事態が発生したことがたびたびなもので)。できれば,これ用にリストを作って,見てもらうといいと思います。

 土曜日及び日曜日はお休みとし,もし,ウイークデイにやむなく休んだ場合には,その週の土曜日又は日曜日に振り替えることとし,問題は朝,解答は晩ということにしたいと思います。



twitter http://bit.ly/cDWVp1

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表見取締役と名目取締役及び表見代表取締役 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 表見取締役と名目取締役及び表見代表取締役 

 今年度の司法書士試験の午前の部第35問の文中に表見取締役という文字をみたとき,見たこと,聞いたことがないなと思った人も多いことだろうと思います。表見代表取締役と見間違えた人も案外いるのではないでしょうか。

 表見代表取締役は,会社法の条文見出しにもあることだし,知っているけど,表見取締役は・・・という人が多いのではないかと思います。表見が前についている点で同じですから(外観法理ないし禁反言則による責任を負う場合という点では同じ),この単語だけ見たり聞いたりしたときは同じ仲間かなと考えるのが自然のような気がします。もっとも,問題文に「取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者」と書かれていましたから,落ち着いてみれば,表見代表取締役とは異なることは,すぐわかりますね。

 表見代表取締役の問題と表見取締役の問題は,誰の責任が問題とされているのかという点が,つまり,第三者による責任追及の相手方が異なります。表見代表取締役においては,表見代表取締役がした行為について株式会社が第三者に対して責任を負うというものですが,表見取締役においては,就任登記をされた表見取締役が第三者に対して責任を負うというものです。名目取締役も,名目取締役が責任を負うという問題です。

 では,例によって,問題となる条文です。声を出して読んでみませんか。表見取締役は,表見的取締役,名目取締役は,名目的取締役とそれぞれ的を付して呼ばれることもあります。

 表見代表取締役
 会社法354条
 株式会社は,代表取締役以外の取締役に社長,副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には,当該取締役がした行為について,善意の第三者に対してその責任を負う。

 表見取締役 名目取締役
 会社法429条1項
 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは,当該役員等は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。


 表見取締役
 会社法908条2項
 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は,その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。

名目取締役と表見取締役をどの条文の見出しにしようかと思いましたが,上記のようにしました。

問屋の権利 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋の権利
 問屋は,一般的な権利として,報酬請求権(商法512条)及び費用に関する請求権(民法650条等)を有しますが,商法は,特則として,次の各権利について規定しています。

 留置権
 商法557条は,代理商の留置権に関する商法31条を準用しています。そこで,問屋は,委託者のために物品の販売又は買入れをしたことによって生じた債権(例えば,報酬請求権や費用償還請求権)の弁済期が到来しているときは,その弁済を受けるまでは,委託者のために問屋が占有する物又は有価証券を留置することができます(同条本文)。ただし,当事者が別段の意思表示をしたときは,このかぎりではありません(同ただし書)。
 商法521条に留置権の規定があるのにもかかわらず,どうして,このような規定があるのでしょうか。商法521条の留置権は,商人間だからです。商法521条だけであれば,委託者が商人でない場合に,問屋が保護されないからです。

 供託・競売
 問屋が買入れの委託を受けた場合において,委託者が買い入れた物品を受け取ることを拒み,又はこれを受け取ることができないときは,問屋は,売買における売主の供託権・競売権に関する商法524条が準用されます(商法556条)。そこで,問屋は,その物を供託し,又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができます。この場合において,問屋がその物を供託し,又は競売に付したときは,遅滞なく,委託者に対してその旨の通知をしなければなりません。競売に付する場合には,原則として,相当の期間を定めて催告をしなければなりませんが,損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は,催告をしないで競売に付することができます。競売に付したときは,問屋は,代価を供託しなければなりませんが,費用及び報酬に充当することは妨げられません。

 以上は,民法497条の特則です。商取引の敏活決済を目的とします。

 民法497条
 弁済の目的物が供託に適しないとき,又はその物について滅失もしくは損傷のおそれがあるときは,弁済者は,裁判所の許可を得て,これを競売に付し,その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも,同様とする。

 介入権
 商法555条1項は,問屋が取引所の相場のある物品の販売又は買入れの委託を受けたときは,問屋は,自ら買主又は売主となることができますが(これを問屋の介入権といいます),この場合においては,売買の代価は,問屋が買主又は売主となることの通知を発した時における取引所の相場によって定めるものとしています。

 問屋が販売又は買入れを委託された物品の買主又は売主となることによって,委託者の目的は迅速に達成されることから,介入権が認められるのですが,しかし,この場合には,問屋と委託者の利益が相反し,委託者の利益が害されるおそれがあります。そこで,商法は,目的物が取引所の相場のある物品であること,その売買価格を委託者に対しその旨の通知を発した時の取引所の相場によるものとして,認めることにしました。

 問屋の介入権の行使によって,問屋と委託者の間に売買契約が成立することになるとともに,問屋は,委託を実行したことになりますから,問屋は,委託者に対して報酬を請求することができます(商法555条2項)。

問屋の義務 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋の義務
 問屋は,受任者として,善管注意義務を負い(民法644条),また,取得した物品又は代金を委託者に引き渡す義務を負いますが(民法646条),商法は,問屋の義務として,次の3個の義務について規定を置いています。

 通知義務
 問屋が委託者のために物品の販売又は買入れをしたときは,遅滞なく,委託者に対して,その旨の通知を発しなければならないとされています。代理商の通知義務に関する商法27条の準用です(商法557条)。民法では,これは,委任者の請求があったとき,及び委任が終了した後の報告義務となっていますが,問屋は,委託者の請求を待たずに通知を発すべき義務を負うとされています。これは,取引の迅速主義の要求及び委託者の便宜を図ることに基づきます(コンメンタール商行為法P313)。問屋は,通知を発すればよく,到達については責任を負いません。


 指値順守義務
 商法554条
 問屋カ委託者ノ指定シタル金額ヨリ廉価ニテ販売ヲ為シ又ハ高価ニテ買入ヲ為シタル場合ニ於テ自ラ其差額ヲ負担スルトキハ其販売又ハ買入ハ委託者ニ対シテ効力ヲ生ス

 売買価格について委託者が問屋に対して指定する場合もあり,また,問屋に一任することもあります。前者が指値売買(さしねばいばい)であり,後者が成行売買(なりゆきばいばい)です。指値は,通常,委託販売のときは最低価格を,委託買入のときは最高価格とされます。指値売買のときには,問屋は,当然,その指値を順守する義務を負うわけですが,問屋がその指値を順守せず,指値より安く売り,あるいは高く買った場合には,委託者は,委託に反するものとして,委託者に対して効力が生ずることを否定することができます。もっとも,問屋がその差額を負担するのであれば,委託者にとって利益が別段害されることはないということで,その販売又は買入れは委託者に対して効力を生ずるとされています。これが商法554条です。

 履行担保義務(責任)
 商法553条
 問屋ハ委託者ノ為ニ為シタル販売又ハ買入ニ付キ相手方カ其債務ヲ履行セサル場合ニ於テ自ラ其履行ヲ為ス責ニ任ス但別段ノ意思表示又ハ慣習アルトキハ此限ニ在ラス

 問屋は,反対の特約又は慣習のない限り,委託者のためにした販売又は買入れについて,相手方がその債務を履行しない場合には,自らその履行をする責任をおうとされています(商法533条)。この問屋の履行担保義務は,委託者を保護するものですが,このように法が問屋に責任を負わせることによって,問屋制度の信用を維持しようとするものです(このような責任を認めると利用者は安心して問屋を利用することができることになります)。したがって,この問屋の責任は,無過失責任であると解されます。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
 オ 問屋は,委託者のためにした売買について,相手方がその債務を履行しない場合には,その履行をする責任を負うが,仲立人は,媒介した商行為について,当事者の一方の氏名又は商号を相手方に示さなかったときを除き,そのような責任は負わない。○


 エ 問屋は,委託者のためにした売買契約が成立した場合には,各当事者の氏名又は商号,行為の年月日及び契約の要領を記載した書面を作成し,署名し,又は記名押印した後に,その書面を委託者に交付する義務を負うが,仲立人は,媒介する商行為が成立した場合でも,そのような義務は負わない。×
 問屋と仲立人が逆です。そもそも,1行目の問屋の記述に関して,各当事者のという表現がおかしいですね。

問屋における代理の規定の準用 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 代理に関する規定の準用

 商法552条は,問屋と委託者との間においては代理に関する規定を準用するとしています。すでに述べたように,問屋と代理とは法形式上は,全く異なるのですが,販売又は買入れが委託者の計算で行われることから(経済的効果,問屋と代理の経済的実質の類似),このような規定が置かれているものと考えられます。

 しかし,問題は,この規定によって,代理に関するどのような規定が準用されるかどうかです。難しい問題です。まず,民法107条2項の復代理の規定が準用されるかどうかの問題があります。まず,復代理人に関する民法107条2項(復代理人は,本人及び第三者に対して,代理人と同一の権利を有し,義務を負う。)が準用されるかどうか。すなわち,甲から物品の販売の委託を受けた問屋Aが,問屋Bに当該物品の販売を再委託した場合に,甲は,民法107条2項の準用により,Bに対して直接権利を主張することができるかどうかです。最高裁判所は,これを否定しています。

 最判昭和31年10月12日
「問屋と委託者との法律関係はその本質は委任であり商法522条2項が両者の間に委任及び代理に関する規定を準用すると定めているのは,委任の規定を適用し,代理の規定を準用する趣旨であり,そして代理に関する規定中民法107条2項は,その本質が単なる委任であって代理権を伴わない問屋の性質に照らし再委託の場合にはこれを準用すべきでないと解するを相当とする。」


なお,最判昭和49年10月15日は,「商品取引所の取引員は法律上の問屋であるから,同人が取引所において自己の名で売買取引をしたときは,委託者の指図に基づかない場合でも,取引自体は法律上の効力を生じ,委託者は,取引員との関係でその取引による計算が自己に帰属することを否認することはできるが,その取引自体を無効とすることはできない。」としています。

 一番問題となるのは,問屋が破産した場合の問題です。すなわち,問屋が委託に実行によって取得した権利を委託者に移転する前に問屋が破産した場合に,委託者は,この権利を破産財団から取り戻すことができるかどうかです。争いがありますが,最高裁判所は,これを肯定しています。

 最判昭和43年7月11日
「問屋が委託の実行として売買をした場合に,右売買によりその相手方に対して権利を取得するものは,問屋であって委託者ではない。しかし,その権利は委託者の計算において取得されたもので,これにつき実質的利益を有する者は委託者であり,かつ,問屋は,その性質上,自己の名においてではあるが,他人のために物品の販売または買入をなすを業とするものであることにかんがみれば,問屋の債権者は問屋が委託の実行としてした売買により取得した権利についてまでも自己の債権の一般的担保として期待すべきではないといわなければならない。されば,問屋が前記権利を取得した後これを委託者に移転しない間に破産した場合においては,委託者は右権利につき取戻権を行使しうるものと解するのが相当である。」

 商法552条で問屋と委託者との間で代理に関する規定を準用すると定めた意味について,コンメンタール商行為法P279は,「買入委託の場合に問屋の買入れた物品または債権が問屋から委託者への特別の譲渡行為なくして,問屋と委託者との間においては,委託者に帰属するということ,及び代理人と本人との対内関係に関係する若干の規定,すなわち復任権に関する規定(民104条・105条)が適用されるということである」としています。

問屋 委任の規定の適用 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 内部関係
 商法552条2項  問屋ト委託者トノ間ニ於テハ本章ノ規定ノ他委任及ヒ代理ニ関スル規定ヲ準用ス

 委任の規定の適用
 商法552条は,問屋と委託者との間においては,問屋に関する規定のほか,委任に関する規定が準用されるとしているが,問屋と委託者との取次契約は,委任契約そのものですから,準用ではなく,適用です(この点については争いがないと言われています)。

 そこで,民法の委任に関する規定の適用により,問屋は,委託者に対して善良な管理者の注意をもって,その事務を処理する義務を負います(民法644条)。また,受任者の報酬に関する民法648条2項が適用され,後払となります。つまり,問屋は,委託者のためにする売買契約が成立する前に委託者に報酬を請求することはできません。もちろん別段の意思表示があれば別でしょうが,通常は,そのようなことはないと思われます。さらに,費用に関する民法の規定(民法649条~650条)が適用されます。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
 ウ 問屋は,委託者のためにする売買に関し,委託者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うが,仲立人は,委託者のため商行為の成立に尽力する義務を負う場合であっても,媒介する商行為に関し,当事者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務は負わない。×
後半は誤っていますが,前半は正しい記述です。

 イ 問屋は,委託者のためにする売買契約が成立する前であっても,委託者に報酬を請求することができるが,仲立人は,媒介する商行為が成立する前に,当事者に報酬を請求することはできない。×
後半は正しいのですが,前半の記述が誤っています。

問屋の法律関係 その1 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋の法律関係

対外関係
 商法552条1項   問屋ハ他人ノ為ニ為シタル販売又ハ買入ニ因リ相手方ニ対シテ自ラ権利ヲ得義務ヲ負フ

 これは,問屋と第三者との間でした売買契約について権利を有し義務を負うのは問屋であるということを意味する条文です。問屋と第三者(相手方)との間の売買契約は,問屋が自分の名でしたものだから,法律上の権利義務の主体は,委託者ではなく,問屋であり,これは,当然のことを規定しているということになります。問屋の行う売買が委託者のために行われたことについて,第三者(相手方)が知っていたかどうかによって結論に違いはありません。「問屋と相手方との関係は,通常の売買における売主と買主との関係と同一である。委託者が問屋の相手方と直接の関係に立つことはなく,委託者は問屋から権利の譲渡を受けまたは債務の引受をしない以上,問屋の相手方に対して権利を主張することはできないし,また義務を負うこともない。」(コンメンタール商行為法P281)。

このように,対外関係においては,内部関係で問題となる経済的実質よりも法的形式が問題となります。そこで,売買契約の成立及び効力に影響を及ぼすべき事情は,問屋について決されることになります。もっとも,民法101条2項は類推適用されると解されています。

 民法101条2項
 特定の法律行為を委託された場合において,代理人がその指図に従ってその行為をしたときは,本人は,自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても,同様とする。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
 ア 問屋は,委託者のためにした物品の販売に関し,支払を受けることができるが,仲立人は,媒介した商行為に関し,当事者のために支払を受けることはできない(問題文冒頭に,「ただし,別段の意思表示又は慣習はないものとする。」とあります。)。○
 前半も後半も正しい記述です。なお,後半については,前述 http://bit.ly/9H4exH

問屋営業 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋営業

 問屋は,「といや」と読みます。「とんや」とは,概念が異なります。「とんや」は,世間では,卸売商(商品の流通過程において生産者と小売商との間にいる商人)のことをいいます。例えば,呉服問屋とかいいますよね。「とんや」は「といや」ではありません。法律的にみれば,自己の名で売買をするのは共通しますが,他人の計算でするか,自己の計算でするかで決定的に異なります。

 問屋の定義
 商法551条  問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為ニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

 口語文にします。問屋とは,自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れを行うことを業とする者をいう。自己の名をもってとは,問屋自身の名義でということで,物品の販売又は買入れの契約の当事者は,委託者ではなく,問屋ということです。他人のためにとは,他人の計算においてであると言われますが,経済的効果(取引から生ずる損益)が誰に帰属するかを問題にしています。

 法律行為は,原則的な形としては,本人の名義及び計算で行われます。例えば,Aが自分を契約当事者として売主Bと売買契約を締結し,Aに法律的効果(所有権移転,代金支払い義務等)が帰属します。ところが,他人の名で法律行為をし,その他人に法律的効果が帰属するというものがあります。代理です。その間にあるもの,つまり,自分の名で法律行為をするから法律的効果は行為者自身に帰属するが,その経済的効果は他人に帰属するというもの,これを取次ぎといいます。間接代理ということもあります。

 問屋 運送取扱人 準問屋
 取次ぎに関する行為を営業としてするときは商行為とされますから(営業的商行為,商法502条11号),自己の名をもって取次ぎに関する行為を業としてする者は,商人です(商法4条1個)。このような取次業者には,取次ぎの目的である行為が何であるかによって3種類に分けられます。物品(有価証券を含みます,最判S32.5.30)の販売又は買入れであるときが,問屋,物品運送(契約)であるときが,運送取扱人(商法559条1項),以上以外のときが,準問屋(商法558条)です。

 商法559条
 運送取扱人トハ自己ノ名ヲ以テ物品運送ノ取次ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ
② 運送取扱人ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外問屋ニ関スル規定ヲ準用ス

 商法558条
 本章ノ規定ハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為ニ販売又ハ買入ニ非サル行為ヲ為スヲ業トスル者ニ之ヲ準用ス

仲立人の権利 2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 仲立人の報酬請求権
 商法512条
 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは,相当な報酬を請求することができる。

 商法550条
 仲立人ハ第546条ノ手続ヲ終ハリタル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
 ② 仲立人ノ報酬ハ当事者双方平分シテ之ヲ負担ス

 仲立契約は,委任契約です。民法の規定によれば,特約がないかぎり無償ということになるのですが(民法648条1項),仲立人は,商人で,その営業の範囲内で他人のために行為をするということですから,特約の有無にかかわらず,報酬請求権を有します。この報酬請求権は仲立料と呼ばれます。この報酬には,費用(交通費,通信費等)が当然に含まれると解され,仲立人は,報酬とは別にこの費用を請求することはできないと解されています。

 商法550条は,その報酬の支払時期と報酬支払義務者について規定しています。まず,報酬の支払時期は,結約書の作成・交付の手続を終了した後とされています。ここまでが,仲立人のしなければならないことですから,この段階で報酬の支払の請求をすることができるというわけです。つまり,仲立人の媒介によって当事者間に契約が成立し,結約書の作成・交付が終了すれば,報酬の支払の請求をすることができます。


 また,仲立人の報酬支払義務は,仲立人に委託した一方当事者だけでなく,委託していない相手方も負担し,当事者双方が平分して(半額ずつ)負担するとされています。
 当事者双方が負担するという理由について,有斐閣アルマ商法総則・商行為法 第2版 P274は,「仲立人は,事後の紛争に備えて種々の義務を負うなど,委託者でない相手方についても,公平にその利益を図って業務を遂行する立場にあるので,委託者ばかりでなく非委託者に対しても,報酬を請求できるとされたものである。」としています。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
イ 問屋は,委託者のためにする売買契約が成立する前であっても,委託者に報酬を請求することができるが,仲立人は,媒介する商行為が成立する前に,当事者に報酬を請求することはできない。×
後半は正しい記述ですが,前半の記述が誤っています。


仲立人の権利 1 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

給付受領代理権
  商法544条 仲立人ハ其媒介シタル行為ニ付キ当事者ノ為ニ支払其他ノ給付ヲ受クルコトヲ得ス但別段ノ意思表示又ハ慣習アルトキハ此限ニ在ラス

  商法544条本文は,仲立人は,その媒介した行為について,当事者のために支払その他の給付を受けることができないとしていますが,これは,仲立人に給付受領の代理権を否定したものであり,当然のことを規定したもの,つまり,注意的な規定です。というのは,仲立人は,媒介をする者であって,自ら法律行為の当事者となるものではなく,また,代理人ではないからです。
 例外として,別段の意思表示があるとき又は慣習があるときは,当事者のために支払その他の給付を受けることができます(同条ただし書)。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問 ア 問屋は,委託者のためにした物品の販売に関し,支払を受けることができるが,仲立人は,媒介した商行為に関し,当事者のために支払いを受けることはできない。(問題文冒頭に,「ただし,別段の意思表示又は慣習はないものとする。」とあります。)○
問屋の説明は,後にすることにする予定ですが,前半も後半も正しい記述です。

氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)
 当事者がその氏名又は商号を相手方に示さないように命じたときは,仲立人は,これに従わなければならず,そこで,仲立人は,結約書及び仲立人日記帳の謄本にその氏名又は商号を記載することができません(商法548条)。

 商法548条の立法理由は,結約書及び仲立人日記帳に,各当事者の氏名又は商号を記載しなければならないとされていることから,当事者から黙秘を命じられたときの黙秘義務を明確にする必要があることにあります。さらに,黙秘義務の実用性についての立法理由として,コンメンタール商行為法(喜多先生執筆)P250は,「当事者は自己の氏名または商号を相手方に知らせないまま,仲立人をして交渉に当たらせることによって,取引を有利に導く場合がしばしばあるとともに,相手方にとっても没個性的な商取引の当事者がだれであるかを知る必要のない場合が多いことである(同説,松木105頁,石井52頁,服部=星川・基コ117頁(神崎執筆))。」としています。

 商法549条は,この黙秘義務に関連して,仲立人が当事者の一方の氏名又は商号をその相手方に示さなかったときは,相手方に対して,自ら履行をする責任を負わなければならないとしています。これを仲立人の介入義務といいます。仲立人は,契約の当事者ではありませんから,本来,履行の責任を負う者ではありませんが,「当事者の一方を匿名にして仲介をした結果について,相手方の信頼を裏切らないための担保責任」(上記書P252)として,責任を負います。そうでなければ,氏名又は商号を黙秘した一方当事者の相手方が信用してその様な取引に応じないということにもなりますから,このような担保責任は,このような制度の信用維持のためのものであると言えます。

 なお,商法548条の立法理由は,結約書及び仲立人日記帳に,各当事者の氏名又は商号を記載しなければならないとされていることから,当事者から黙秘を命じられたときの黙秘義務を明確にする必要があることにあると書きましたが,当事者から黙秘を命じられた場合に限定されません(条文参照)。また,匿名の当事者が媒介の委託者である場合だけでなく,相手方である場合も,仲立人は,介入義務を負います。

平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問 オ 問屋は,委託者のためにした売買について,相手方がその債務を履行しない場合には,その履行をする責任を負うが,仲立人は,媒介した商行為について,当事者の一方の氏名又は商号を相手方に示さなかったときを除き,そのような責任は負わない。○

仲立人の義務 2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 見本保管義務
 仲立人は,その媒介する行為について見本を受け取ったときは,その行為が完了するまで,これを保管する義務を負うとされています(商法545条)。仲立人の見本保管義務です。

 商法545条から商法547条にかけて規定されている仲立人の3個の義務は,契約当事者間の後日の紛争を防止するという趣旨で共通しています。取引の目的物が見本によって定められ,見本と同一の品質を有することを保証する売買,これを見本売買といいますが,見本売買において,仲立人が受け取った見本が,将来において生ずるかもしれない当事者間の紛争解決のための証拠となることから(証拠保全),保管義務が課されています。

 「其行為カ完了スルマテ」とは,上記の趣旨からして,媒介による行為の完了の時までということではなく(目的物が給付されただけでなく),品質に関する紛争が発生しないことが確実になった時をいうものと解されています(通説)。


 結約書の作成・交付義務
 媒介によって,当事者間に行為,つまり,契約が成立したときは,仲立人は,遅滞なく,契約の各当事者の氏名又は商号,行為(契約)の年月日及びその要領を記載した書面を作成して,署名した後,これを各当事者に交付しなければならないとされています(商法546条1項)。この書面を結約書とか,仕切書とか契約証とかいいます。
 後日の紛争防止のため,契約内容を記載した書面を作成して,各当事者に交付するというものです(証拠保全)。各当事者の請求を待つまでもなく作成して交付しなければなりませんが,契約成立の要件ではありません。なお,各当事者の氏名又は商号が記載事項とされていますが,当事者から氏名又は商号の黙秘の命令があったときは,それを守らなければなりません(商法548条)。

 当事者が直ちに履行すべき場合ではない場合(目的物の給付が条件付きあるいは期限付きの場合)には,仲立人は,各当事者に上記の結約書に署名させた後,これをその相手方に交付しなければならない(商法546条2項)。結約書の交換ですね。その際に,当事者の一方が結約書を受領せず,又は,これに署名しないときは,仲立人は,遅滞なく,相手方に対してその通知を発しなければなりません(同条3項)。当事者の一方が結約書を受領しないとか,署名しないということは,その契約について異議があるということでしょうから,遅滞なく連絡をして,処置を講じさせる必要があるからです。

 帳簿に関する義務
 仲立人は,帳簿(仲立人日記帳と呼ばれる)を備えて,これに上記の結約書に掲げた事項を記載して保存の上,各当事者の請求があれば,いつでも,仲立人日記帳の関係部分の謄本を交付しなければなりません(商法547条)。これも,証拠保全です。ここでも,当事者から氏名又は商号の黙秘の命令があったときは,それを守らなければなりません(商法548条)。

 平成22年度午前の部第35問 
エ 問屋は,委託者のためにした売買契約が成立した場合には,各当事者の氏名又は商号,行為の年月日及び契約の要領を記載した書面を作成し,署名し,又は記名押印した後に,その書面を委託者に交付する義務を負うが,仲立人は,媒介する商行為が成立した場合でも,そのような義務は負わない。×

仲立人の義務 1 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 仲立人の義務
 商法は,契約当事者間の後日の紛争を防止するために3個の義務を仲立人に課しています。第1に,見本保管義務(商法545条),第2に,結約書の作成・交付義務(商法547条),第3に,帳簿に関する義務です。また,そのほかに,仲立人の義務として氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)を課しています。

 今回は,各条文を読んでみることにします。いずれも,文語体ですね。平成17年の商法改正で匿名組合までは口語化されましたが,仲立営業以下(商法543条以下)は,そのままとなっています。表記としては濁点が入るべきところに入っていませんが,読むに際しては,濁点をつけてよみます。例えば,仲立人が・・・するまで・・・ 為すべき せざる・・・掲げたるという風に。句点も読点もありません。句点は,まあいいとして,読点は,付けた方が読みやすいですよね。一度,声に出して読んでみてはいかがでしょうか。

見本保管義務
商法545条
 仲立人カ其ノ媒介シタル行為ニ付キ見本ヲ受取リタルトキハ其ノ行為カ完了スルマテ之ヲ保管スルコトヲ要ス


結約書の作成・交付義務
商法546条
 当事者間ニ於テ行為カ成立シタルトキハ仲立人ハ遅滞ナク各当事者ノ氏名又ハ商号,行為ノ年月日及ヒ其要領ヲ記載シタル書面ヲ作リ署名ノ後之ヲ各当事者ニ交付スルコトヲ要ス
② 当事者カ直チニ履行ヲ為スヘキ場合ヲ除ク外仲立人ハ各当事者ヲシテ前項ノ書面ニ署名セシメタル後之ヲ 其ノ相手方ニ交付スルコトヲ要ス
③ 前2項ノ場合ニ於テ当事者ノ一方カ書面ヲ受領セス又ハ之ニ署名セサルトキハ仲立人ハ遅滞ナク相手方ニ 対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス


帳簿に関する義務
商法547条
 仲立人ハ其帳簿ニ前条第1項ニ掲ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
② 当事者ハ何時ニテモ仲立人カ自己ノ為ニ媒介シタル行為ニ付キ其帳簿ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得


仲立人の氏名又は商号黙秘の義務及び介入義務
商法548条
 当事者カ其氏名又ハ商号ヲ相手方ニ示ササルヘキ旨ヲ仲立人ニ命シタルトキハ仲立人ハ第546条第1項ノ書面及ヒ前条第2項ノ謄本ニ其氏名又ハ商号ヲ記載スルコトヲ得ス

商法549条
 仲立人カ当事者ノ一方ノ氏名又ハ商号ヲ其相手方ニ示ササリシトキハ之ニ対シテ自ラ履行ヲ為ス責ニ任ス

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仲立人 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

仲立人

 旅行斡旋業者でもいいし,不動産取引業者(宅地建物取引業者)でもいいのですが,まず,イメージしておきます。ただし,後者については,商行為に当たらない不動産取引の媒介をする場合には,次に述べる商事仲立人ではなく,民事仲立人に当たります。

 商事仲立人と民事仲立人
 仲立ちとは,他人間の法律行為を媒介することをいいます。自らが当該法律行為をするわけではありません。仲立人は,このような他人間の法律行為の媒介をすることを業とする者をいいますが,その法律行為が商行為である場合と商行為以外の法律行為の場合とがあります。前者が,商事仲立人,後者が,民事仲立人と呼ばれます。商法543条は,「仲立人トハ他人間ノ商行為ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ」としており,544条以下に商事仲立人の権利義務について規定しています。媒介とは,契約成立に至るように各種の仲介,斡旋,勧誘といった事実行為をすることを意味するのですが,契約の成立に尽力することと表現されたりもします。

 結婚仲介業者や家庭教師の斡旋業者も民事仲立人です。民事仲立人も,商人です。仲立ちに関する行為が営業的商行為とされ(商法502条11号),民事仲立人は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者だからです(商法4条1項)。

 以下,商法543条以下に従い,仲立人とは,商事仲立人を意味するものとします。

 仲立契約の法律的性質
 代理商契約の場合には,委任もしくは準委任であると書きましたが,仲立契約は,準委任(民法656条)です。仲立ちは,法律行為ではなく,事実行為だからです。もっとも,民法656条は,「この節(第10節 委任)の規定は,法律行為でない事務の委託について準用する。」としていますから,委任であっても,準委任であっても,いいのですが,ここでは,仲立ちに関する行為が法律行為でない事務,事実行為であることをしっかりと頭に入れておきます。問屋との比較においてです。

 仲立人の義務
仲立契約は,準委任契約です。したがって,民法656条により民法644条が準用されます。
「受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意義務を負う。」善管注意義務です。しかし,民法の規定だけでは不十分として,商法は,特別の規定を置いています。

 まず,仲立人の義務に関する規定です。商法は,契約当事者間の後日の紛争を防止するために3個の義務を仲立人に課しています。第1に,見本保管義務(商法545条),第2に,結約書の作成・交付義務(商法547条),第3に,帳簿に関する義務です。また,そのほかに,仲立人の義務として氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)を課しています。
以下,次回につづきます。

 平成22年度 午前の部 第35問
ウ 問屋は,委託者のためにする売買に関し,委託者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うが,仲立人は,委託者のため商行為の成立に尽力する義務を負う場合であっても,媒介する商行為に関し,当事者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務は負わない。×


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仲介業 代理商 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 今年度の午前の部第35問は,問屋と商事仲立人との比較という商行為法の問題でした。そこで,問屋と商事仲立人に関する事柄について,何回かにわけて書いてみることにします。

仲介
 商法総則・商行為法の本をみると,代理仲立問屋を一つの章としてまとめてあるものがあります。代理は,代理商,仲立は,仲立営業(仲立人),問屋は問屋営業を取り扱っています。これらに共通するのは,仲介業務に関するということです。その仲介の形態として,ここに3類型が挙げられていることになります。

 まず,それぞれの商人のイメージがあった方がわかりやすいでしょうね。具体例でいきましょう。代理商については,損害保険の代理店をイメージしておきましょうか(家電製品の代理店でもいいですよ)。自動車の任意保険で毎年一度は連絡がありませんか。仲立人としては,旅行斡旋会社(もちろん会社である必要はありませんが,有名なところでもイメージしてください),問屋としては,証券会社をイメージしておきましょう。私が商行為法を習ったときは,証券会社が典型例だと言われたものですが,現在,金融商品取引法があるため,証券会社を商法の問屋と解する実益はほとんどないと言われていますが・・・。

 街をあるくとき,あるいは車で通るとき,看板をみたら,代理商,仲立人,問屋というように,確認しておくといいですね(連想です)。

代理商 
 さて,まず,代理商ですが,今年度は,出題されませんでしたが,可能性があるということで,さわりだけ。商法総則と会社法に規定があります。会社の代理商について,「体系書 会社法 上巻」P27からP30までにかけて,ふれています。

 代理商については,定義があって,「商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で,その商人の使用人でないものをいう。」とされています(商法27条括弧書)。会社法は,会社の代理商の定義規定を置いていますが,上記の商人の部分が会社になっているだけで,あとは,同じです(会社法16条括弧書)。会社も商人ですから(商法4条1項,会社法5条),以下,会社を含めて,商人の用語を使います。

 定義付けから,代理商は,取引の代理をする締約代理商と取引の媒介をする媒介代理商に分けることができます。取引の代理とは,商人の代理人として商人の名で相手方との間で法律行為をすることをいいます。これに対して,取引の媒介とは,商人と相手方との間で契約成立に至るように各種の仲介,斡旋,勧誘といった事実行為をすることをいいます。
 そこで,締約代理商は,法律行為をするという点において問屋と共通する面を有し,媒介代理商は,法律行為をするのではなく,契約成立に至るよう事実行為をするという点において,仲立人と共通する面を有します。

 しかし,代理商は,特定の商人のために取引の代理又は媒介をする者であって,不特定の商人あるいは商人でない者のために活動する仲立人や問屋と異なります。そこで,代理商の条文の位置が,商行為法のところになく,商法総則の商業使用人の次にあると言われています(会社法では,会社の使用人の次)。

 代理商契約(商人と代理商との間の契約)の法的性質は,委任(締約代理商)もしくは準委任(媒介代理商)です。そこで,委任に関する民法及び商法の一般規定(民法643条以下,商法504条,505条)の適用もしくは準用(民法656条)を受けることになりますが,商法総則に,代理商の権利義務について,特別の規定を置いています。

午前の部 第30問 ア [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 ア 
取締役会は,3か月に1回以上開催しなければならないが,監査役会は,3か月に1回以上開催することを要しない。

 正しい記述です。この点も,取締役会についてはこれに関する規定があるが(直接規定しているわけではありませんが),監査役会については,これに関する規定がないというものですね。私の作成した表には入っていません・・・。改訂の際には入れなければならないかな・・・本試験に出たからなあ・・・。このようなところを問うとは思っていなかったからなあ・・・。といっても,言うまでもないことかもしれないし・・・。

 しかし,取締役会の開催について知っていれば,正しいと判断できますね。「体系書 会社法 上巻」P395~P396です。

 「取締役会は,意思決定機関であって,取締役会が決定したことの執行は,代表取締役や代表取締役以外の業務執行取締役に委ねられる。取締役会は,これらの取締役の職務の執行を監督する権限と義務を有する。この監督は,取締役の職務執行の適法性だけでなく妥当性にも及ぶ。
 このような取締役会の監督権限が十分に実効的に行われるためには,取締役会の構成員である各取締役が取締役会設置会社の業務の執行の状況についての情報を与えられている必要がある。そこで,業務執行権限を有する取締役すなわち代表取締役及び業務執行取締役は,3カ月に1回以上,自己の業務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないこととされている(会社法363条2項)。後述のように,会社法は,取締役会への報告の省略の制度を創設したが(会社法372条),この報告については,省略することができない(同条2項)。したがって,取締役会は,決議すべき事項がない場合でも,少なくとも3カ月に1回は開かれなければならないということになる。1年に4回開けばいいということではない。」

 監査役会については,監査役会の職務の内容(会社法390条2項)からして,上記のような取締役の監査役会への報告義務はなく,したがって,3カ月に1回以上開催しなければならないということはないということになるのでしょうね。


午前の部 第30問 エ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 エ
取締役会における議決の要件は,定款で定めるところにより加重することができるが,監査役会における議決の要件は,定款で定めることにより加重することができない。

 正しい記述です。形式的理由(根拠)としては,取締役会については規定があるが,監査役会については規定がないということになります。つまり,取締役会については,定足数及び決議要件について会社法369条1項が規定しています。次のとおりです。

 会社法369条1項
 取締役会の決議は,議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合以上)が出席し,その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合以上)をもって行う。

 括弧書で加重することができることが明らかにされています。実質的理由は,取締役会の決議をより慎重に行わせることは,むしろ望ましいことであり,禁止する必要はないというところにあります(「体系書 会社法 上巻」P402)。

 これに対して,監査役会の決議については,会社法393条1項です。

会社法393条1項
監査役会の決議は,監査役の過半数をもって行う。

 定足数の定めがありませんね。現実に出席した監査役の数に関係なく,監査役全員の過半数ということになります。そして,取締役会の決議のような括弧書がありません。加重することができるかという問いに対しては,解釈としては,会社法369条1項のような括弧書がないからできないということになります。

 加重することができないということは,江頭先生も前田先生も,明文で書いてはおられません(江頭「株式会社法第3版」P493,前田「会社法入門第12版」P517)。そのほか,会社法というタイトルの本をいくつかみましたが,その中で,次の森本先生執筆のもの以外にありませんでした。
 会社法会社法コンメンタール8のP487~P488です。次のように書かれています。

 「株主総会(309ⅠⅡ等参照)や取締役会(369Ⅰ参照)の場合と異なり,定足数の定めはない。現実に出席している監査役の数いかんに関わりなく,監査役全員の過半数をもって決議が成立するのである。この決議要件の加重は認められないと解されるのであろう(29・412Ⅰ括弧書参照)。」29とあるのに気がつきましたか?形式的根拠ですね。

 では,お前はどう書いたのだ・・・です。はい。このように書いています(「体系書 会社法 上巻」P454)。
「監査役会の決議は,監査役の過半数をもって行う(会社法393条1項)。出席監査役の過半数ではない。定足数の定めはなく,現実に出席した監査役の数に関係なく,監査役全員の過半数である。」

 このように本文中に加重することができないと,きちんと書いていません。上記の森本先生の執筆部分を読んだ上で原稿を書いていますから,比較の表を作る際に定足数及び決議要件の比較として,下の写真のようにしました。

 さて,では,実質的理由(根拠)は何か。問題文を見て,解説をどう書けばよいのかなと考えていました。結局,取締役会が業務執行の意思決定をする機関であって,濫用のおそれもあり,意思決定を慎重にするために(歯止めのために),要件を加重することには合理性があるが,監査役会は,監査機関であるから,その意思決定を困難にすることは合理性がないと・・・。会計監査人の解任決議は別として,通常の監査役会の決議の要件が厳しくて(法律の規定よりも厳しくして),その意思が決定されないようであれば,監査役会を設けた意味は半減するではないか・・・ということではないかと思います。

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午前の部 第30問 イ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 イ
取締役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることができるが,監査役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることはできない。

 正しい記述です。これができないと,監査役会について理解していないことになり,勉強不足ということになります。

 もっとも,私は,立法論的に,取締役会における書面決議に疑問をもっていて,会議体であることからして,取締役会だって監査役会だって,書面決議を認めるべきではないと思っています。とは言っても,これは,立法論であって,会社法は,取締役会については,取締役会の決議の省略の制度(書面決議)を認め(会社法370条),監査役会については,監査役会の決議の省略の制度(書面決議)を認めていないことは明らかです。

 取締役会の決議の省略について,「体系書 会社法 上巻」P204からその説明をもってくることにします。

 「ところが,会社法は,取締役会の決議の省略の制度を創設した(会社法370条)。株主総会の決議の省略(会社法319条)に対応するものである。すなわち,定款で定めることにより,取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において,当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。これは,企業活動の国際化に伴って外国に居住する取締役も増加している状況等から,機動的な会社経営の実現のため,現に会議を開催しない形での決議を認めるべきであるという実務上の強い要請(商事法務№1744 P103)に応えたものである。ただし,監査役設置会社にあっては,監査役が当該提案について異議を述べたときは,認められない(同条括弧書)。」

 では,なぜ,監査役会においては,決議の省略が認められないのか。それは,監査役会制度の存在理由にあります。この点についても,「体系書 会社法 上巻」からもってくることにしましょう。

 「監査役会は,すべての監査役(3人以上)で組織される会議体である(会社法390条1項,335条3項)。監査役会制度は,平成5年の特例法改正により,大会社においては,監査役の員数を3人以上としたことに伴い,新設されたものであるが,複数監査役制を採る大会社においては,各監査役が役割を分担し,それぞれが調査した結果を持ち寄って,相互の調査を相補うことにより,会社の業務についての必要にして十分な知識・情報を共通にするとともに,それに基づいて相互の意見の内容や根拠について相互に検証し合うことにより,組織的な監査を実現し,その監査の一層の適正かつ実効性を期すため,また,それまでのように監査役が個別に意見を述べるより,合議体としての監査役会が意見を述べることにした方が,経営陣に対する効果といった点からもプラスになるものと期待されるとして創設されたものである(一問一答平成5年改正商法 P133~P134参照)。
 会社法は,これを受け継いだものであるが,委員会設置会社以外の公開会社である大会社についてだけ,監査役会の設置を強制する(会社法328条1項)。それ以外の株式会社においては,任意に設置することができるが(委員会設置会社には置くことができない),取締役会設置会社以外の株式会社には認められない(会社法327条1項2号)。」

 上記の存在理由からして,監査役会において,書面決議による決議の省略を認めることは,監査役会制度を否定することになります。しかし,理論的説明としては,以上のようになるとしても,実際問題としては,実務上,監査役会における書面決議の要望はなかった,書面決議による決議の省略の必要性は認められないということだったのでしょうが,それは,なぜなのでしょうか。

それは,業務執行を担当しない監査役が,企業活動の国際化に伴って外国に居住する・・・ということはないでしょうし,何より,監査役会設置会社において,監査役の員数は3人以上とされていますが(会社法335条3項),実際の監査役の員数は,3人~5人にすぎません。日本に住所を有する数人の監査役は,容易に本社に出かけることができる態勢にある・・・。また,監査機関ですから,会議の頻度としては,少ないということもありますね。

午前の部 第30問 ウ オ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問

 取締役会と監査役会の比較の問題です。両者の比較自体は,出題の可能性の高かった問題と思いますが,しかし,そのうち,アとオは,予想外の出題でした。難しいというのではなく,こう来るのかという感じですね。

 今回は,正解の組合せであるウとオについて,考えてみます(誤っているものの組合せはどれかということで,ウとオが誤っていて,正解は5です)。いずれも,同一の観点から考えることができます。

問題文
オ 取締役会においては,その決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは,その決議に賛成したものと推定されるが,監査役会においては,その決議に参加した監査役であって異議をとどめないものは,その決議に賛成したものとは推定されない。

誤った記述です。
大きく見れば,両者に共通することは,特定の構成メンバーから成る会議体であることですが,異なるのは,一方は,業務執行に係る機関であるのに対して,他方は,監査機関であることです。前者から異同の同が,後者から異がでてくると一応言えるのではないかと思います。

 オの前半,取締役会については,この規定があることは,ほとんどの受験生にとって,常識に属します。さて,監査役会はどうだったかです。単純に,条文があったということを記憶していれば,もちろん容易に正誤を判断できるのですが,どうかなと思った人の方が多かったことでしょう。

 取締役会議事録におけるこの推定規定(会社法369条5項)は,次のような趣旨によって規定されています。すなわち,取締役会議事録には決議の結果については記載又は記録がされることになっているものの,出席者のうちの誰が賛成しあるいは反対したかの記載又は記録をすることは要求されていません(会社法369条3項,施行規則101条参照)。そこで,株主がその権利を行使するために必要があるとき,又は債権者が責任追及をするために必要であるときに(親会社社員は,その権利を行使するために必要であるとき),取締役会議事録の閲覧等の請求をすることができるわけですが(会社法369条,裁判所の許可を要する場合と要しない場合があります),これによっては,誰が当該決議に賛成したかを立証することは容易ではないため,議事録に異議をとどめないものについて,その決議に賛成したものと推定したものです。

 とすると,これは,監査役会議事録でも,同じことであろうということになります。監査役会議事録については,会社法393条4項に,同様の規定があります。おおざっぱにいえば,取締役会も監査役会も,責任を負う立場にいる特定の構成メンバーからなる会議体であることから同じことだと言えます。

 ウも同様の問題となります。
ウ 取締役会は,取締役の全員の同意があれば,招集の手続を経ることなく開催することができるが,監査役会は,監査役の全員の同意があっても,招集の手続を経ることなく開催することができない。

 誤った記述です。監査役会においても,監査役の全員の同意があれば,招集の手続を経ることなく開催することができます。条文としては,会社法392条2項です。緊急に開催する必要性があり,正規の招集手続招集の手続をとる時間的余裕のないことも多く,また,招集手続は,会議体において,その構成メンバーの出席の機会と準備の機会を与えるためですが,構成メンバー全員の同意があるのであれば,招集手続を省略しても,さほど不都合はないからです。これは,取締役会と監査役会で異なりません。

 第30問は,続きます。

07.12夕  問題文オ 転記間違いがありましたので,その部分を削除しました。


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平成22年度司法書士試験 概観(商法) [平成22年度司法書士試験筆記試験]

概観(商法)

 今頃になって何を・・・,と言われそうな気がするのですが,司法書士試験受験用の本の書名を見ていて,書名に会社法と商法を分けて表示しているものがあることに気がつきました。これは,形式的意義によって商法の概念を考えているのですね。形式的意義の商法とは,商法典(「商法」と名付けられた法典)を意味します。つまり,商法と会社法は,法典が別であることから(商法と会社法は,平成17年の会社法の成立,及び商法の改正により,別の法典となったことはいまさら言うまでもありませんが),このように名付けたのでしょうね。

 私は,実質的意義により,会社法,商法(商法総則,商行為,海商)等を含むものとして,平成17年以後も「商法」を使ってきました。「過去問商法165 Check Test 」の商法は,この意味です。そうでなければ,この「過去問商法165」は,平成18年から平成21年までのものですから,1問だけ(平成21年度第35問)ということになってしまいますからね。これは,法務省の司法書士試験の受験案内の中の試験の内容の(1)として,憲法,民法,商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)及び刑法に関する知識となっていることから,そのように考えてきました。

 そこで,これからも,午前の部の科目は,憲法,民法,商法,刑法であるということで書いていくことにしようと思っています。

 さて,前置きが長くなってしまいました。今年の司法書士試験の商法は,去年に引き続き,9問の出題でした。商法の出題は,平成15年に午前の部の試験科目として憲法が追加されて,それまでの9問の出題から1問減り,8問とされ,それが一昨年まで続いていたのですが,昨年1問増えて,再び,9問となりました。また,長い間,商法総則,商行為の分野から出題されていませんでしたが,昨年は,商法総則から出題され,今年は,商行為から出題されました。

 第35問,午前の部の最後の問題で「問屋及び商事仲立人の異同に関する次の・・・」という文字が目に入った受験生は,驚いたことでしょう。学生時代に商行為法の単位をとった受験生は,なんとか正解を出せたのではないかとも思うのですが(確信のないところですが),そもそも,問屋をとんやと読んだ受験生も少なからずいたのではないかと思うのですが,どうでしょう?

 今年の商法で商法総則か商行為法から出題されることは,予想されるところでした。もっとも,商法総則の方が可能性としては高いとみていました。商行為法から出るのであれば,昨年の出題からみて,平成14年度第35問のような商行為通則であろうとみていました。問屋と仲立人とは・・・絶句・・・というところです。

 しかし,それがこの1年以内のことではなくてもどこかで,一度でも問屋について勉強したことのある人であれば,問題文を冷静に読み,なんとかアとオが正しい記述であるとして正解に達したという人もかなりいるのではないかと思うのですが(消去法で達したかもしれませんが),どうでしょうか。とんやと読んだ人は無理だったかもしれません。

 第31問は,久しぶりに学説問題登場ということで,ここで焦った人も多いと思われます。時間があってあわてなければ,そして,考えて答えを出そうとしたのであれば,アが誤っていることは比較的容易でしょうし,イも誤っていると判断することは容易だったのではないかと思いますから,あとは,消去法で4か5,つまり,ウは正しくて,エかオが誤っているということになります。さて,どちらを選んだかですが・・・。改めて,ゆっくりと読めば,オを選んだのではないでしょうか。しかし,この問題は,正解率が高いとは思えないですね。試験会場で時間との闘いの中ではなかなか正解を出しにくいところと思えます。

 第31問は,会社法429条1項の役員等の第三者に対する責任追及の前提として,会社法908条2項が問題とされています。登記の効力のうち,不実事項の登記の効力(公信力)の規定です。実は,この不実事項の登記の効力についての規定は,商法総則にあったものでした(改正前商法14条)。商法改正及び会社法成立により,商法では,口語化されて,9条2項に,会社法は,全く同じ文言で,会社法908条に規定されることになりました。私は,その意味で,旧商法のもとでの,商法総則の問題でもあるといえるのではないか。つまり,ここでも,商法総則が出題されているような気がしました。商法作成担当者が複数であるのであれば,第31問と第35問は,同じ作成者のようなきがするのですが・・・さて。なお,この問題についての判決として,最判昭和47年6月15日があります。 

 他の問題については,易しい問題とやや難しいかなと思われる問題がありますが,合格するためには,正解できなければならない問題だと思います。振替株式の出題がありましたが(第28問),ウとエは,合格レベルの司法書士試験受験生の常識であると考えなければならないと思います(常識でなければ常識にしなければなりません)。こんなところは絶対に出ないと言っていた人もいたようですが,しかし,アとイだけで,2を正解とすることができた人も多かったかもしれません(だからと言って,知らなくてもいいのだということにはなりません)。

07.14 9段落目について書き直しました。

平成22年度司法書士試験筆記試験終了 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

平成22年度司法書士試験筆記試験終了

 平成22年度司法書士試験筆記試験が7月4日に行われ,1週間が経過しようとしています。試験終了後,受験した人達から試験終了のメールが届きましたが,多くが疲れ切ったという内容のものでした。精神的にも肉体的にも限界というメールもありました。

 すでに勉強を開始した人もいるでしょうし,しばらく休養中という人もいるでしょう。前者は,勉強を始めて間もない人(1年以内の人)はもちろんのことだろうと思いますが,そうでない人も結構います。今,これを読んでいる本職の方,自分はどうでしたか?

 ある人からは,本をみるのも嫌で,しばらく試験のことを考えない生活をしたいとのメールがあり,ある人からは,何もしないでいると落ち着かないので,勉強しますという電話がありました。

 当たり前のことを言うんじゃないよと言われそうですが,力を出せたという人もいれば,そうでない人もいるでしょう。後者が圧倒的であるのはもちろんで,自信のある人は,ほんの一握りですよね。これまで,私の教え子達で,自信があって,点が取れた,首尾は上々と連絡があり,実際に,合格して行った人は,思い出してみると,3人くらいしかいません(20数年の講師生活で)。まあ少ないけれど,そういう人もいるのはいるとも言えますが。

 ともあれ,もしも,先週の日曜日に力が出せなかったのであれば,どうしてか,その原因を探り,ノートしておくといいと思います。できるだけ早い時期に。1問1問検討し,平成23年度司法書士試験の合格のためにというサブタイトルのついた「平成22年度司法書士試験の記録」のノートをつくりませんか。正解か不正解か,自分はどれにつけたか,不正解であればどうしてこれにつけたか,知らなかったのか,かん違いしたのか(何かと間違ったか),勉強していないところだったのか,していたけどあやふやだったのか,ここまで手が回らなかった・・・等々等々。時間配分がうまく行かなかったのであれば,それも書いておきます。思いつくことをすべて。分析してみれば,自分の性格を含めて,弱点がある程度発見できるのではないでしょうか。それをもとに対策を立てましょう。

 それから,今年,5月6月頃になってあれもやっておけばよかった,これもやっておけばよかったと思いませんでしたか?時間があればするのに・・・と思いませんでしたか?それも書いておいて,できるだけ年内の早い時期にしておきましょう。

 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」 悔しい思いをあれだけ去年したはずなのに・・・1年はあっという間に過ぎて行きます。悔しい思いを忘れてはなりません。

 私は,今,今年の本試験問題が手に入ったので,読んでいます。○×をつけて,答えを一応出すのですが,解くという感じではありません。長い間,解答速報のために解いてきましたが,今は,解くというより,読んでいるという感じです。そこで,時間があいたときに,できたらセレクトしてコメントしようかなとも思っています。今,商法(会社法,商法総則,商行為)の択一問題集を作っているところですから,商法からでも。

任意後見制度 最終回 [後見制度]

任意後見契約の終了 つづき

法定後見開始の審判等
 任意後見契約が登記されている場合には,家庭裁判所は,本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り,後見開始等(後見開始,保佐開始,補助開始)の審判をすることができるとされています(任意後見法10条1項)。本人保護と本人の意思の尊重の衝突の一場面ですが,「特に・・・限り」とあるところに,本人の意思の尊重を優先していることがうかがえます。後見・保佐・補助開始の審判の請求は,任意後見受任者,任意後見人又は任意後見監督人もすることができます(同条2項)

 では,後見開始・保佐開始・補助開始の審判が行われた場合に,任意後見契約はどうなるでしょうか。

 任意後見監督人が選任される前か後かで異なります。任意後見法10条3項は,任意後見人が選任された後(つまり,任意後見契約が効力を生じていた場合)には,任意後見契約は終了するとされています。任意後見人と法定後見人等の権限の抵触を避けるためです。

 これに対して,任意後見監督人が選任されていない場合には,後見開始の審判等があっても任意後見契約は終了しないということになります。

委任契約の終了事由
 任意後見契約は,委任契約ですから,委任の終了事由に関する民法653条の適用があります。そこで,任意後見契約は,次の事由の発生によって終了します。

1 本人又は任意後見人の死亡
2 任意後見人が破産手続開始の決定を受けたこと。
3 任意後見人が後見開始の審判を受けたこと。

 任意後見契約の効力が発生した後に,本人の死亡によって任意後見契約が終了するということは,言ってみれば当然の想定事項だと思われますが,任意後見の効力が発生する前に本人の死亡によって任意後見契約が終了するということは,当然の想定事項とは言えないと思います。後者が結構多いのではないかと思えるのですがどうでしょうか。任意後見契約の委任者(本人)の年齢が80歳以上が約半数であることだけでなく,任意後見契約を締結しても,任意後見監督人を選任する段階において,本人が同意しないことが多いことにも原因があるのでしょうか。

 任意後見人が死亡するというのは,もちろん,不慮の事故,あるいは病によるということもあるでしょうが,高齢によるということもありそうです。そうであれば,任意後見人の年齢も問題になりそうです。

任意後見人の代理権の消滅の対抗要件
 任意後見人の代理権の消滅は,登記をしなければ,善意の第三者に対抗することができないとされています(任意後見法11条)。取引の安全の要請によります。

任意後見制度 その11 [後見制度]

任意後見契約の終了

 任意後見契約は,契約解除,任意後見人の解任,法定後見開始の審判,当事者の死亡等の委任契約の終了事由の発生によって終了します。

契約解除 任意後見法9条
 任意後見契約も,契約ですから,その契約の解除によって終了します。しかし,任意後見法9条は,この契約の解除について,任意後見監督人の選任される前と選任された後に分けて,次のように,規定しています。

第1項  第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任される前においては,本人又は任意後見受任者は,いつでも,公証人の認証を受けた書面によって,任意後見契約を解除することができる。
第2項  第4条第1項の規定により任意後見監督人が選任された後においては,本人又は任意後見人は,正当な事由がある場合に限り,家庭裁判所の許可を得て,任意後見契約を解除することができる。

 つまり,任意後見監督人の選任前においては,本人又は任意後見受任者は,いつでも任意後見契約を解除することができるけれども,解除するには,公証人の認証を受けた書面によらなければならないということですね。公証人の認証を受けた書面となっていますが,これは,当事者の真意を担保するためです。契約締結時と異なり,公正証書による必要はありません。なお,この場合においても,任意後見契約で正当な事由がある場合に限るという限定が付されることが多いようです。

 任意後見監督人の選任後,つまり,任意後見契約が効力を生じた後においては,本人又は任意後見人は,正当な事由がある場合に限り,家庭裁判所の許可を得て,任意後見契約を解除することができます(同条2項)。任意後見契約が効力を生じた後ですから,本人保護のために,正当な事由の存在家庭裁判所の許可を要求するわけです。

解任 任意後見法8条
 任意後見人に不正な行為,著しい不行跡その他その任務に適しない事由があるときは,家庭裁判所は,任意後見監督人,本人,その親族又は検察官の請求により,任意後見人を解任することができることとされています(任意後見法8条)。

 任意後見監督人が解任の請求をすることができるとされているのは,監督権を実効的にするものとして当然だと思いますが,後見監督人が動かない場合に備えて,本人の親族及び検察官が請求することができるとされていることが注目されます。任意後見人の解任によって任意後見契約は終了することになります。

任意後見契約の終了は,続きます。

任意後見制度 その10 [後見制度]

任意後見監督人

 任意後見制度においては,任意後見監督人の存在というものが極めて重要であることは,任意後見契約の発効が任意後見監督人の選任によって生ずるとされていることから明らかです(任意後見法2条1号)。本人の保護において,任意後見人に誰がなるかがもちろん極めて重要ですが,任意後見監督人にどのような人あるいは法人がつくかも,極めて重要なことだと思います。世間一般では,監査とか監督の職にあるとしても,名目的なものあるいは形式的なものにとどまっているというものがよく見かけられますが,この制度において,このようなことになると,この制度は崩壊ですよね。そこで,家庭裁判所が選任し,任意後見監督人が家庭裁判所に定期的に報告することになっていますし,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,任意後見監督人に対し任意後見人の事務に関する報告を求め,任意後見人の事務もしくは本人の財産の状況の調査を命じ,その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができるとされています(任意後見法7条3項)。もっとも,任意後見監督人の監督が厳しすぎても,さて,それで,本人の保護になるのか,本人の意思の尊重の問題としてどうなのかということもありそうです。

資格 欠格事由
このように任意後見監督人は重要な地位を有しますから,任意後見監督人の資格が重要となります・・・そこで・・と書きたいところですが,積極的資格については,法律上の制限はありません。自然人だけでなく,法人もなることができます(任意後見法7条4項,民法843条参照)。複数の選任も可能です。司法書士弁護士,その他のプロに限定されているわけではありません。しかし,欠格事由の定めがあります。適正かつ実効的な監督の確保のためということですが,よく理解できるところであろうと思います。

まず,任意後見法5条は,任意後見監督人の欠格事由という条文見出しをおいて,「任意後見受任者又は任意後見人の配偶者,直系血族及び兄弟姉妹は,任意後見監督人となることができない。」としています。また,任意後見法7条4項が,後見人の欠格事由に関する民法847条を準用していますから,次の者も,任意後見監督人になることができません。

1 未成年者 2 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人又は補助人 3 破産者 4 被後見人に対して訴訟をし,又はした者並びにその配偶者及び直系血族 5 行方の知れない者

職務・権限
任意後見監督人の職務については,任意後見法7条1項が規定しています。

任意後見人の職務は,次のとおりとする。
1 任意後見人の事務を監督すること。
2 任意後見人の事務に関し,家庭裁判所に定期的に報告をすること。
3 急迫の事情がある場合に,任意後見人の代理権の範囲内において,必要な処分をすること。
4 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

任意後見人の権限については,任意後見法7条2項です。

任意後見監督人は,いつでも,任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め,又は任意後見人の事務若しくは本人の財産を調査することができる。

なお,委任や後見に関する民法の規定が,任意後見法7条4項により任意後見監督人に準用されています。

1 民法644条 受任者の善管注意義務
2 民法654条 委任終了後の応急処分義務
3 民法655条 委任終了の対抗要件
4 民法843条4項 選任の際に考慮すべき事情
5 民法844条 後見人の辞任
6 民法846条 後見人の解任
7 民法847条 後見人の欠格事由
8 民法859条の2 成年後見人が数人あるときの権限行使の方法
9 民法861条2項 費用の支弁
10 民法862条 後見人の報酬


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散歩途中の道端で

任意後見制度 その9 [後見制度]

任意後見人の義務 

善管注意義務
任意後見契約は,委任契約の一類型ですから,任意後見人は,後見事務を行うに当たって,善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)負います(民法644条)。

身上配慮義務本人の意思尊重義
しかし,さらに,任意後見法6条は,「任意後見人は,第2条第1号に規定する委託に係る事務(以下「任意後見人の事務」という。)を行うに当たっては,本人の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」としています。ここに,身上配慮義務と本人の意思尊重義務が規定されています。この点については,成年後見人(民法858条),保佐人(民法876条の5第1項)補助人(民法876条の10,876条の5第1項)と同様の規定となっています。身上配慮義務の法的性質については争いがありますが,今回は,割愛します。

 身上配慮義務,つまりは本人の保護の要請の問題と本人の意思の尊重とは,難しい問題がありますが,ただ,法定後見の場合と異なり,任意後見の場合には,任意後見契約締結時においては,本人に充分な判断能力があるわけですから,任意後見受任者としては,充分に本人の意思を聞き出し,確認しておく(書面にする)ことにより,できるだけ,本人の意思にそって,後見事務を遂行していくことができるのではないかと思えます。任意後見制度のメリットですから,この点を生かすということになるのでしょうね。しかし,とは言っても,実際は難しいことがいろいろありそうです。

次は,任意後見監督人,そして,任意後見契約の終了で,これで,任意後見契約については,終了となります。

ブラックベリー.JPG

庭の食べれるブラックベリー これの正面にブルーベリーがあるのですが,今年は出来がよくない。

適用除外の適用除外 否定の否定 [条文を追っかける]

 適用除外の適用除外…否定の否定 この場合には,結局適用するということなのですよね。

 昨日のCheck Test 会社法№139です。

 司法書士試験 受験生のためのCheck Test 会社法№139 株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には,他の株主は,売主追加請求権を有しない。○か×か。

 解答は,×です。問題文としては,非公開会社に限定していないので,×としました。非公開会社に限定するところに意味があるからです。会社法162条柱書のただし書,1号です。


会社法162条を見ます。

(相続人等からの取得の特則)
第百六十二条  第百六十条第二項及び第三項の規定は、株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しない。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない
一  株式会社が公開会社である場合
二  当該相続人その他の一般承継人が株主総会又は種類株主総会において当該株式について議決権を行使した場合

会社法160条2項,3項も必要ですね。では,ついでに1項も含めて。
(特定の株主からの取得)
第百六十条  株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
2  株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
3  前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。

 つまり,会社法160条2項は,3項は,当該譲渡株主以外の株主に私の株式も買ってくれという売主追加請求権を認めるものですが,この規定は,株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には、適用しないというのですから,売主追加請求権は認められませんよ,と言っているのですよね。しかし,ただし書があって,次のいずれかに該当する場合は、この限りでないとするわけです。その1号に,「当該株式会社が公開会社である場合」は適用しないのだよということです。ということは,非公開会社だけですよとなります。とても回りくどいのですが,慣れれば簡単なのでしょうけどね。私は,だんだんと慣れてはきていますが・・。簡単に,「公開会社でない株式会社においては,・・・適用しない。ただし,当該相続人その他の一般承継人が株主総会・・・」とすると読みやすいのですけどね。

 私は,「体系書 会社法 上巻」で次のように書きました。P177からP178から引用です。

 非公開会社においては,会社法160条2項及び3項の規定(売主追加請求権)は,株式会社が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得した当該株式会社の株式を取得する場合には,適用されない(会社法162条)。つまり,非公開会社においては,取得する株式が株主の相続人その他の一般承継人からその相続その他の一般承継により取得したものである場合には,他の株主が自己を「特定の株主」に追加したものを株主総会の議案とすることの請求をすることはできない。これにより,株式会社は,当該相続人その他の一般承継人だけから自己株式を取得することができることになる。これは,非公開会社において,相続等により当該株式会社にとって好ましくない者が株主となった場合において当該株主も株式を手放すことについて異議がないときに,その状態を解消しやすくするための措置である(商事法務№1740 P48参照)。非公開会社であっても,当該相続人その他の一般承継人が株主総会又は種類株主総会において当該株式について議決権を行使した場合には,以上の特則は適用されない(同条2号)。この場合,当該相続人その他の一般承継人は,株主としてとどまることを選択しているからである。


 今日のブログは,雑談に関するものにしようと思いましたが,もしも・・・などとふと思って,会社法の問題にしました。

任意後見制度 その8 [後見制度]

任意後見人の後見事務の内容

 任意後見人の後見事務の内容は,任意後見契約の委任者(本人)の具体的必要性に応じて,任意後見契約で定められ(代理権目録),任意後見人受任者又は任意後見人の代理権の範囲として登記されています(後見登記等に関する法律…以下5条4号)。

 「代理権」の範囲ですから,法律行為の代理です。法律行為の対立概念として事実行為がありますが,事実行為は含まれません。例えば,介護等の事実行為は,任意後見人の後見事務ではありません。もっとも,法律行為の遂行に必要不可欠な付随的事実行為は含まれると解されています(民事月報Vol.54.12 P34参照)。例えば,施設入所契約を締結する前の段階として,当該施設を本人と一緒に見学に行くことは,後見事務に含まれると解されています。

委任者から授権される法律行為は,2つに分類することができます。一つは,財産管理に関する法律行為,もう一つは,身上監護(生活又は療養看護)に関する法律行為です。財産管理に関する法律行為としては,例えば,預貯金の管理・払戻し,不動産その他の重要な財産の処分,遺産分割,賃貸借契約の締結・解除等があります。身上監護に関する法律行為としては,介護契約,施設入所契約,医療契約の締結等があります。

 任意後見人が財産管理に関する法律行為として最も頻繁にすることは,預貯金の管理・払戻しであることは,容易に推測することができます。介護費用や入院・手術等の医療費が多額であるときは,不動産の処分ということもありますね。施設に継続的に入所ということになると,これまで住んできた家屋を賃貸するとか,賃借してきた家屋の賃貸借契約を解除するとかいうことも生じます。法定後見等の場合と異なり(民法859条の3,876条の5第2項,876条の10第1項),居住用不動産の処分についても,家庭裁判所の許可は不要です。なお,不動産の処分について登記の申請も代理権付与の対象となると解されていて,代理権があるときは,実務上,任意後見登記の登記事項証明書が任意後見人の代理権限証明書となるとされています(H15.2.27民事二課長通知)。

 任意後見人がする身上監護に関する法律行為について,LS東京 山崎政俊さんは,「福祉サービス利用契約(介護サービス,配食サービス,施設入所契約等)の締結・変更・解除及び費用の支払いは,任意後見人が行う身上監護に関する事務の中心的なものである。」とされ,福祉サービスの利用に関しては,いわゆる ① 見守り活動(本人を定期的に訪問することによって,本人の生活及び身体状況を確認すること。たとえば,入所施設内での処遇の監視等),および, ② アドボカシー活動(本人の身上面に関する利益の主張をしたり,あるいは代弁したりすること。たとえば,入所施設内での処遇の改善を施設に申し入れる等)が重要になるとされています(講義レジュメP5)。


任意後見制度 その7 [後見制度]

任意後見人の員数(任意後見人が複数の場合の単独代理と共同代理)

 任意後見人は1人に限られるという規制はありません。報酬を支払うという場合であれば,金銭的に余裕がある場合のことになるでしょうが,財産が各所にたくさんある等,各種の事務が多数である場合もあるでしょうから,複数の任意後見人が必要になることもあると考えられます。また,共同代理にして,代理権の濫用を防止するということもあるでしょうね。

 任意後見人が複数であるという場合には,それぞれの任意後見人が単独で代理権を行使するという単独代理の場合もあるし,共同代理の場合もあります。共同代理の定めは,登記事項とされていますから(後見登記等に関する法律5条5号),この登記(あるいは任意後見人の示す後見登記事項証明書)によって,単独代理か共同代理かが明らかになります。

 任意後見人が複数である場合に,単独代理であれば,任意後見契約について公正証書を作成するときには,公正証書も別々に作成されることになります。この場合には,任意後見契約も,各任意後見受任者ごとに独立の契約であると考えられるからです。単独代理の場合には,家庭裁判所は,任意後見受任者のうちの1人について不適任の事由があっても,他の任意後見受任者に不適任の事由がなければ,任意後見監督人の選任の審判をして,任意後見契約を発効させることができます。

 これに対して,共同代理ということになると,任意後見契約は,1個の不可分な契約ということになりますから,公正証書も1通ということになります。したがって,また,任意後見受任者のうちの1人について不適任の事由があれば,他の任意後見受任者について不適任の事由がなくても,家庭裁判所は,任意後見監督人の選任の審判をしないということになります。

今朝咲きました。
ハイビスカス.JPG

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