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8月27日のテストの正解 [商法総則・商行為法]

 8月27日のテストの解答です。

問題 商人間の売買に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 売買の性質又は当事者の意思表示により,特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達しない場合において,当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは,相手方は,相当の期間を定めて催告をしなくても,直ちにその契約の解除をすることができる。
イ 買主は,その売買の目的物を受領したときは,遅滞なく,その物を検査しなければならない。
ウ 売買の目的物に瑕疵又は数量の不足があるときは,その事実を知ってから1年以内であれば,契約の解除又は代金減額もしくは損害賠償の請求をすることができる。
エ 隔地売買において,買主が,売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることによって契約を解除したとき,買主は,原則として,売主の費用をもって売買の目的物を保管し,又は供託をしなければならない。
オ 隔地売買において売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合には,買主は,原則として,売主の費用をもって売買の目的物を保管し,又は供託をしなければならない。
1 ア ウ 2 ア オ 3 イ ウ 4 イ エ 5 エ オ

誤っているものはアとウで,1が正解です。

ア 時期の経過とともに当然に解除の結果を生ずることとされています(商法525条)。
http://bit.ly/bSo4BX
イ 商法526条1項
 http://bit.ly/cFf4mT
ウ 買主は,検査によって売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは,直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければならず,これを怠ると,その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額もしくは損害賠償の請求をすることができないとされています(商法526条2項)。3項も注意です。
http://bit.ly/cFf4mT
エ 商法527条
http://bit.ly/bdixbh
オ 商法528条
http://bit.ly/bdixbh

商事売買 テスト [商法総則・商行為法]

 昨年・今年と商法総則・商行為法から出題されました。来年どうかはわかりませんが,もし,この傾向が続くのであれば,来年は,商法総則の可能性が高いとは思うのですが,商行為法ということになると,商行為総則というところでしょうが,今年と同じ路線ということになると,商事売買あるいは場屋営業主の責任のあたりかもしれません。

 それで,商事売買について,数回にわたって書いてきましたが,読むばかりでは頭に残らないかもしれないので,問題を作成してみました。解説はありませんが(前のブログをご覧ください,ただし,答を出してからです),正解は,twitterの方ででも。

 問題 商人間の売買に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 売買の性質又は当事者の意思表示により,特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達しない場合において,当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは,相手方は,相当の期間を定めて催告をしなくても,直ちにその契約の解除をすることができる。
イ 買主は,その売買の目的物を受領したときは,遅滞なく,その物を検査しなければならない。
ウ 売買の目的物に瑕疵又は数量の不足があるときは,その事実を知ってから1年以内であれば,契約の解除又は代金減額もしくは損害賠償の請求をすることができる。
エ 隔地売買において,買主が,売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることによって契約を解除したとき,買主は,原則として,売主の費用をもって売買の目的物を保管し,又は供託をしなければならない。
オ 隔地売買において売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合には,買主は,原則として,売主の費用をもって売買の目的物を保管し,又は供託をしなければならない。

1 ア ウ 2 ア オ 3 イ ウ 4 イ エ 5 エ オ

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買主の目的物の保管・供託義務 [商法総則・商行為法]

 買主の目的物の保管・供託義務

 今回で商事売買は,一応,終了です。どうして,商法総則・商行為法について書いているかというと,昨年・今年と商法総則・商行為法と出題が 続いたことから,来年度も出題があるかもしれない,まるで勉強していない人も多いだろうから,今のうちに,一度だけでも目にしていれば,しばらくして,やはり,商法総則・商行為法を勉強しておいた方がいいなと思った人にとって,少しは楽だろうとおもったことにあります。

 今,少し,時間をとって,このブログでも読んでおけば,気がついたことをメモでもしておけば,ひょっとしたら,役立つかもしれないと思い,書いています。ありときりぎりすのありの応援です。

 と同時に,これは,商法の択一問題集の商行為法の部の準備でもあります。書いていくことによって,忘れていたことを思い出し,もう一度記憶として定着させるため私自身が確認をしていっています。

 さて,商事売買の最終回,買主の目的物の保管・供託義務です。
条文からです。

 (買主による目的物の保管及び供託)
 商法527条  前条第1項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。ただし、その物について滅失又は損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければならない。
2  前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
3  第1項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を発しなければならない。
4  前3項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、適用しない。

 商法528条  前条の規定は、売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主から買主に引き渡した物品及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合における当該超過した部分の数量の物品について準用する。

 (解除の効果)
 民法545条  当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2  前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3  解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

 民法の規定によれば,売買の目的物の瑕疵又は数量不足によって売買契約が解除された場合には,買主に原状回復義務を負い,目的物の返還義務があるだけで(民法545条),保管したり供託したりする義務は負わされていません。
 しかし,これを商人間の隔地売買に適用すると,売主にとってみれば,その目的物を放置される危険があるし,また,目的物の所在地で売却した方が有利なことが多いからです(返還となると返還費用を負担するだけでなく,このような売却の機会を失うことになります)。

 そこで,商法は,民法の原則を修正して,商人間の隔地売買において,買主が検査通知義務を履行して、目的物の瑕疵又は数量不足を理由に契約の解除をしたときは,買主は,売主の費用をもって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならないとし,ただし、その物について滅失又は損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければならないとしたわけです(商法527条1項,4項)。なお,買主が売買の目的物を競売に付したときは,遅滞なく,売主に対してその旨の通知を発しなければなりません(同条3項)。
また,売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主から買主に引き渡した物品及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合にも,当該超過した部分の数量の物品についても,同様に,保管又は供託する義務を負うものとされています(商法528条)。

 これまで,商人間の隔地売買という限定をして書いてきましたが,どこからそんなことが出てくるのかと言われそうです。商法527条4項です。
 商法527条4項は,「前3項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にある場合には、適用しない。」としています。つまり,逆にいえば,「売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の区域内にないこと」が保管義務・供託義務の要件であるということになります。これは,売主の営業所(営業所がない場合にあっては,その住所)が目的物の所在地にない場合には,売主が直ちに適当な処置をとることができないことを理由に保管又は供託義務を課したということを意味します。したがって,両当事者の営業所が同一の市町村の区域内にあっても,売主が買主の指定した他地に目的物を送付した場合にも,買主の保管又は供託義務が認められると解されています(通説)。結局,隔地売買が要件となるというわけです。

目的物の検査義務と通知義務 その3 [商法総則・商行為法]

 買主の目的物検査義務及び通知義務について,3回に及んでしまいました。思わず,文が長くなりました。しかも,前回の標題が間違っていました。さきほど修正しました。気付かなかったのは本人だけなのかも・・・。

今日は,買主の検査・通知義務の要件と商法526条の適用範囲についてです。

 買主の検査・通知義務の要件

(1) 商人間の売買であること
(2) 買主が売買の目的物を受領したこと
(3) 売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があること
(4) 売主に悪意がないこと

(1) 商人間の売買であること
   商人間の売買であって,両当事者にとって商行為であることを要します(通説)。
(2) 買主が売買の目的物を受領したこと
   目的物を受領しなければ,検査することができないからです。現実に目的物を受領しなければ,検査義務   は発生しません。
(3) 売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があること
   瑕疵は,物の瑕疵(民法570条)に限り,権利の瑕疵は含みません。権利の瑕疵の発見には,通常,長時   間を要するからと言われます。目的物の瑕疵とは,その性質,形状,効用,価値等が,約定された通常の   標準に満たないことを言います。見本品売買の場合には,現物が見本より劣っていれば,瑕疵があること   になります。
(4) 売主に悪意がないこと
   悪意とは,目的物の引渡しのときに,目的物の瑕疵又は数量不足を知っていることを言います。売主が悪   意の場合には,売主を保護する必要はありませんから,商法526条1項及び2項は適用されないことになり   ます。

 商法526条の適用範囲
 商法526条は,特定物売買だけでなく,不特定物売買についても適用があります(最判S35.12.2等参照)。また,買主が売主に対して担保責任を追及する場合だけではなく,債務不履行責任を追及する場合にも適用があります(最判S47.1.25参照)。

目的物の検査義務と通知義務 その2 [商法総則・商行為法]

 目的物の検査義務と通知義務

 民法の規定によれば,売主が買主に引き渡した物に瑕疵があったり,その数量が不足する場合には,買主は,売主の担保責任を追及するには,その事実を知った時から1年以内にしなければならないとされています(民法566条3項)。また,買主が売主に対して不完全履行による債務不履行責任を追及するには,10年の時効期間の猶予があることになっています(民法167条1項)。

 しかし,以上は,迅速性を要求する商取引には適当ではありません。売主と買主との法律関係は,早期に確定させる必要があります。そこで,商法は,商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならないとし(商法526条1項),買主は、この検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければならず、これを怠ると,その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができないとされています(同条2項前段)。ただし, 売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合を除きます(同条3項,これは,当然ですよね)。
 
 上記の通知は,直ちに発することを原則としますが,売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合には(隠れた瑕疵),猶予期間があり,買主が6カ月以内にその瑕疵を発見したときに,直ちに通知すればよいとされています(同条2項後段)。

 この商法526条2項後段は,そもそも解りにくい条文ですが,目的物に隠れた瑕疵があって,買主が6カ月以内に瑕疵を発見することができなかったときはどうなるのかが問題です。通説及び判例は,買主は,売主に対して責任追及をすることができなくなると解する立場にあります(最判S47.1.25参照)。

 しかし,商法526条2項後段は,「・・・発見したときも,同様とする。」ですから,前段と同様,つまり・・・買主は・・・請求することができない。とすれば,「発見しなかったときは,前段と同様ではない」・・・つまり,請求することができるとなるようにも読めます。しかし,そのように解すると,この場合に,商法526条の趣旨に反してしまいます。

 また,同じ箇所(商法526条2項後段)を読んで,気づくもうひとつのことは,「瑕疵」とあるけれど,数量不足がないということです。同条2項前段は,瑕疵と数量不足であるのに,数量不足がない。どうしてか。どう解釈したらよいのか。

 通説は,数量不足についても,適用があることと解しています。規定がないことについては,「受取時に発見できない数量不足などありえないと,立法当初は考えられたのかもしれない。」(有斐閣アルマ 商法総則・商行為法第2版P222)とあります。そして,同書は,続けて,「今日のような取引状況にあっては,もはや現実的な想定とはいえないであろう。」としています。

 上記2点については,平成17年の商法改正というチャンスがあったのですから,そのときに,改正を加えて解決すればよかったのにと思います。立法担当者は,それどころではなかったのかもしれませんが・・・。

つづく。

買主の検査義務と通知義務 商法526条 その1 [商法総則・商行為法]

買主の検査義務と通知義務 商法526条 その1

 商法総則や商行為法は,民法の特別法ですから,商法総則・商行為法の勉強は,民法の勉強ともなります。どこが違うのかを意識すれば,記憶定着の程度が格段に違います。

 さて,そこで,今回のテーマは,買主の検査義務と通知義務なのですが,これに関係する民法の規定を先に掲げておくことにします。どのような条文が登場するか?

 民法の復習です。読んで確認しておきましょう。今日は,条文だけにとどめます。

 (権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)
民法563条  売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
2  前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
3  代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。

民法564条  前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ1年以内に行使しなければならない。

(数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任)
民法565条  前2条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。

地上権等がある場合等における売主の担保責任)
民法566条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。

(売主の瑕疵担保責任)
民法570条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
(債権等の消滅時効)

民法167条
債権は,10年間行使しないときは,消滅する。
2 略
商法526条は,これらに関する特則となります。 


(買主による目的物の検査及び通知)
商法526条  商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2  前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3  前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。

売主の供託権・自助売却権 商法524条 [商法総則・商行為法]

 売主の供託権・自助売却権 商法524条

 民法494条 債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

 民法497条 弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも、同様とする。
民法495条3項
前条の規定により供託をした者は,遅滞なく,債権者に供託の通知をしなければならない。

 商法524条  商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しなければならない。
2  損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができる。
3  前2項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。ただし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

 売主の供託権
商法524条1項前段は,商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができるとしていますが,この商人間の売買に関する売主の供託権については,民法の弁済供託に大きな修正は加えられてはいません。民法は,債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができるとしているからです。されているからです(民法494条)。

商事売買における売主の供託に関する負担の軽減としては,供託の通知について発信主義がとられている点があります(民法495条3項と商法524条後段)。

 売主の自助売却権
 ここでいう売主の自助売却権とは,商人間の売買において,買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、売主は、相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができます(商法524条1項前段)。もっとも,損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、催告をしないで競売に付することができます(同条2項)。 これを売主の自助売却権といいます。
  以上により,売買の目的物を競売に付したときは,売主は,その代価を供託しなければならないとされますが(同条3項本文),しかし,その代価の全部又は一部を代金に充当することができるとされています(同ただし書)。

 民法においても,弁済者の自助売却権が認められています。しかし,民法では,自助売却権は,弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるとき、その物の保存について過分の費用を要するときに限定されています。それだけでなく。裁判所の許可を要することとされています。加えて,競売による売却代金は,必ず供託しなければならず,債務に充当することはできないことになっています。

 このような民法の規定は,売主の立場からして,迅速性に欠け,目的物の価格の変動が激しいことが想定される商事売買では,売主の利益が十分に保護されません。そこで,商人間の売買においては(なお,双方の当事者にとって商行為であることを要するとするのが通説です),買主の受領拒絶又は受領不能があれば,売主は,目的物を供託することができるだけでなく,裁判所の許可を要することなく,常に,直ちに競売することができ,さらに,その競売による売却代金(代価)の全部又は一部を売買代金債務に充当することができることとしたものです。


定期売買 商法525条 [商法総則・商行為法]

 定期売買 商法525条

 商法525条(定期売買の履行遅滞による解除)は,民法542条(定期行為の履行遅滞による解除権)の特則(特例)です。条文を並べます。比較です。


 民法542条  契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。

 商法525条  商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。

 定期売買とは,契約の性質又は当事者の意思表示により,特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達しないものをいいます。性質上の定期売買の例として,書中見舞いとして得意先に配布する目的でした大量のうちわの売買(大判T9.11.15)輸出用のクリスマス用品の売買(大判S17.4.4),暦の売買(大阪区判T7.5.15)等があります。

 民法の一般原則によれば,当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができるとされます(民法542条)。

 これに対して,商事売買においては,当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなすとされ(商法525条),解除の意思表示をすることなく,時期の経過とともに,当然に解除の結果を生ずることになります。

 商法525条は,商事売買取引の迅速な処理を図るとともに売主の保護を図ることを目的としています。時期の経過とともに当然に解除されたものとみなされるのですから,迅速な処理ということは,明白ですが,では,どこが売主の保護なのでしょうか?

 売主の目から見ます。民法の規定によれば,売主が履行をしないで,その時期を経過したときは,買主は,催告をすることなく,直ちにその契約の解除をすることができる・・・解除の効果を生ずるためには,売主の解除の意思表示が必要です。ということは,買主は,解除をせずに請求するか,解除をするか選択できることになります。そうすると,買主は,目的物の価格の騰落によって,投機を行うことが可能となります。買主は,売主の危険において目的物の価格が急騰すれば,履行の請求をし,急落すれば,契約を解除するということができます。このような不安定な地位に立たされないようにするためには,相当の期間を定めてその期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をしなければなりません(民法547条)。商法525条は,売主がそのような立場に立たされることから救うことになります。

 ところで,平成17年の商法525条の改正は,単なる口語化にとどまるものではなく,実質的な改正といってもよい改正が行われました。

 旧商法525条は,次のようになっていました。
売買ノ性質又ハ当事者ノ意思表示ニ依リ一定ノ日時又ハ一定ノ期間内ニ履行ヲ為スニ非サレハ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ於テ当事者ノ一方カ履行ヲ為サスシテ其時期を経過シタルトキハ相手方ハ直チニ其履行ヲ請求スルニ非サレハ契約ノ解除ヲ為シタルモノト看做ス

 くらべてみてすぐわかるところがあります。旧商法には,「商人間の売買において」がありませんでした。それゆえに争いがありました。通説及び判例(東京控判T15.9.15)は,商人間の売買に限ると解していましたが,商人間の売買に限られないとする有力な反対説がありました。平成17年の商法改正により,この争いに終止符が打たれたことになります。

商事売買 その1 [商法総則・商行為法]

 商事売買 その1

 商法第2章は,売買と題して,商事売買に関する5カ条を置いています。これらの規定は,民法の売買に関する規定の特則ですが,商人間の売買であって,しかも,当事者双方のために商行為である売買に関するものです。

 これらの規定は,民法の売買に関する特則なのですが,なぜにこのような規定が置かれているのか。それは,商事売買取引の迅速な処理を図るとともに売主の保護を図ることを目的としています。これは,商取引においては,その継続性,反復性,集団性から,迅速な処理が民法よりも一層強く要請されるし,商事売買では,その当事者がその世界における専門的知識を有する商人であるため,相当な期間内に一定の判断をして契約関係を速やかに終了させることができるからです。

 売主の保護?買主の保護の間違いではないのですかと言いたい人もいるかと思いますが,条文を読んでいけば,売主の保護だということが理解できます。売主の利益を強く保護するのは,売主の立場からみて特に取引の迅速な処理の要請があるということですが,それでは,不公平ではないかというと,商人間の売買ですから,商人はあるときは売主になり,あるときは買主となるということでしょうから(地位の互換性),買主になった場合に不利益な立場に立つことも許されてよいと考えられるからです。

 さて,それで,その5カ条をまず,読んでおきましょう。一度,読んで脳のどこかに入れておきましょう。来年,ひょっとしたら,役に立つかもしれません。この部分は,平成17年の商法改正で口語化されていますから,読みやすくなっています。

(売主による目的物の供託及び競売
第524条  商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないとき は、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合 において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しな ければならない。
2  損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができ る。
3  前2項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。た だし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

(定期売買の履行遅滞による解除)
第525条  商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間  内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないで その時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみ なす。

(買主による目的物の検査及び通知)
第526条  商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査し なければならない。
2  前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又は その数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又 は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の 目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3  前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。

(買主による目的物の保管及び供託)
第527条  前条第一項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用を  もって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。ただし、その物について滅失又は損傷のおそれ があるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければなら ない。
2  前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
3  第1項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を  発しなければならない。
4  前3項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の  区域内にある場合には、適用しない。

第528条  前条の規定は、売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主か ら買主に引き渡した物品及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合における 当該超過した部分の数量の物品について準用する。


 さて,次回は,このうち,会社法525条 定期売買の履行遅滞による解除について書こうと思います。民法との比較になります。民法542条です。

最判平成20年2月22日 会社は,商人か。 [判例]

 会社は,商人か。

 会社法は,会社が商人であるかどうかについて規定を置いていません。
 最判平成20年2月22日(民集第62巻2号576頁)は,会社は,商人であると判示しました。

 昨日は,2月26日の最高裁判決でしたが,今日は,その数日前,2月22日の最高裁判決です。新商法及び会社法のもとで,会社が商人であるかどうかについて判示しています。

 この事案は,特例有限会社である甲会社を債権者とし,乙を債務者とする債権を担保するため,乙所有の不動産に抵当権が設定されていたのですが,乙が,原審第1回口頭弁論期日において,当該被担保債権につき商法552条による5年の消滅時効が完成しているとしてこれを援用したというものです。そこで,商法522条の適用が問題となるのです。

 ここで,先に問題となる条文を掲げておくことにします。

 商法522条
 商行為によって生じた債権は,この法律に別段の定めがある場合を除き,5年間行使しないときは,時効によって消滅する。ただし,他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは,その定めるところによる。

 商法4条1項
この法律において「商人」とは,自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

 会社法5条
 会社(外国会社を含む。次条第1項,第8条及び第9条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とする。

上記の消滅時効にかかったとされた債権が,「商行為によって生じた債権」であるかどうかが問題となるのですが,原審は,当該債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできないとして,時効消滅していない旨を判示しました。

「被上告人の代表取締役であるAは,小中学校の同窓であり,C商工会の理事長(A)と理事(上告人)として親交のあった上告人からの依頼を受け,博多駅前の土地を整理して転売するために1億円を必要としていたBの資金に充てるため,「男らしくバンと貸してやるという気持ち」で,自己が代表取締役を務める有限会社である被上告人において上告人の依頼に応じることとし,上告人が竹馬の友であることを強調して,被上告人の経理担当者をして,被上告人がその取引銀行から融資を受けるための手続をさせ,融資を受けた1億円を被上告人が上告人又はBに貸し付けた(以下,この貸付けを「本件貸付け」という。)ものであるから,本件貸付けは被上告人の営業とは無関係にAの上告人に対する情宜に基づいてされたものとみる余地がある。そうすると,本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできず,上記債権には商法522条が適用されないから,上告人の消滅時効の主張はその前提を欠く。」

 これに対して,最高裁判所は,次のように,原審の判断を否定しました。
「しかしながら,原審の本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできないとする判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条), 会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と同義と解される。)。
 前記事実関係によれば,本件貸付けは会社である被上告人がしたものであるから,本件貸付けは被上告人の商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり,本件貸付けがAの上告人に対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,1億円の本件貸付けが被上告人の事業と無関係であることの
立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しないことは明らかである。
 そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同債権には商法522条の適用があるというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」


最判平成20年2月26日  [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 今年の司法書士試験の商法の解説を書いたのですが,今,条文が間違っていないか,打ち間違いがないか,文章がおかしくないか等々,見直しをしています。昨日,見たところで,ここはブログに書いておこうと思った箇所があります。

 さきほど,再録シリーズの一つを載せたものの,思い立ったら,忘れないうちにこの箇所について書かなければならないと思い,書き始め,以下と変更することにしました。

 今年の司法書士試験の商法の部で,久しぶりに,判例を問う問題が出題されました。憲法,民法,刑法,民訴では,判例の趣旨に照らし・・・というのは珍しいことではありませんが,商法では,珍しいものです。しかも,最近の判例についても問われました。午前の部第34問です。

第34問 会社法上の訴えに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らして誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 株主は,募集に係る株式の発行がそれを差し止める旨の仮処分命令に違反してされた場合には,当該仮  処分命令に違反することを無効原因として,新株発行の無効の訴えを提起することはできない。
イ 株主は,株主総会の決議の取消しの訴えを提起した場合において,当該株主総会の決議の日から3か月が 経過したときは,新たな取消し事由を追加主張することはできない。
ウ 株主は,退任後もなお役員としての権利義務を有する者については,その者が職務の執行に関し不正の行為をした場合であっても解任の訴えを提起することはできない。
エ 株主は,募集に係る株式の発行がされた後は,当該株式の発行に関する株主総会の決議の無効確認の  訴えを提起することはできない。
オ 株主は,他の株主に対する株主総会の招集手続の瑕疵を理由として,株主総会の決議の取消しの訴えを 提起することはできない。


いずれも,判例があるのですが,最近の判例を問うを取り上げます。最判平成20年2月26日です。

 この判決で注目するのは,会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利医務を有する者を役員権利義務者と名付けている点ですが,この判決の結論は,問題文ウのとおり,解任の訴えを提起すること,つまり,解任請求をすることは許されないとするものです(ウは正しい記述ということになります)。

最判平成20年2月26日 民集第62巻2号638頁です。

 まず,結論として,「会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(以下「役員権利義務者」という。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(以下「不正行為等」という。)があった場合において,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは,許されないと解するのが相当である。」としています。

次に理由です。形式的理由(条文上の根拠)です。 「同条は,解任請求の対象につき,単に役員と規定しており,役員権利義務者を含む旨を規定していない。」ことを挙げています。そして,実質的理由として,「同法346条2項は,裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(以下「仮役員」という。)を選任することができると定めているところ,役員権利義務者に不正行為等があり,役員を新たに選任することができない場合には,株主は,必要があると認めるときに該当するものとして,仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして,同条1項は,役員権利義務者は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ,新たに選任された役員には仮役員を含むものとしているから,役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても,株主は,仮役員の選任を申し立てることにより,役員権利義務者の地位を失わせることができる。」としています。

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再録 発起人の員数 [Twitterから]

 再録シリーズが続きます。今年の試験問題に関連するものを再録して,読んでもらおうと思い立ち,始めましたが,これをtwitter関連に拡大し,これまで書いてきたものの中から,探し出してきます。これまで書いたものを何度か読んでもらいたいので,つづけようかなと思います。試験問題関連もあったら,また再録したいと思います。この機会に,色をつけたり,太文字にしたりして,少しは,読みやすくしようと思います。

 今日は,昨日のtwitter関連で,発起人の員数に関するものです。

 平成2年の商法改正は,重要な事項の改正をいくつも行っているのですが,第一に思い出すのは,株式会社における発起人の員数の規制の撤廃でしょうか。それまで,株式会社の設立には,7人以上の発起人を要するものとされていました。発起人は,必ず,株主になりますから,株式会社の設立当初は,株主は,最低7人(発起設立)か8人(募集設立)でした。この規制を撤廃して,現在のように,発起人は,1人で構わないとしました。これによって,会社の設立の当初から,株式会社において,一人会社が認められるようになったのでした。

 発起人について,一定の員数を要求したのは,株式会社の設立の確実を期すためで,7人以上としたのは,そのための適当な数がそのあたりということでしょうね(「7人の侍」ですね)。では,その規制の撤廃の理由はどこにあったのでしょうか。立法担当官は,次のように書かれています(大谷禎男著「改正会社法」P33)。

  「しかし,わが国の株式会社の多くは,個人企業の法人成りの形で設立されており,この場合に,企業主は,通常,法人成りを機に他人の参加を得て共同企業としたいとの意図を持っているわけではない。会社が企業分割的な子会社の設立を企図する場合も同様である。このような会社設立の実態に照らすと,旧法165条は,多くの場合に,建前を整えるためだけの操作を強要していたことになる。
 しかも,発起人の員数の規制は,名目的な発起人を用意することによって容易に満たすことが可能であり,したがって規制としての実質的な機能はほとんどなく,かえって法律を軽視する風潮を助長しかねない。また,名目的な発起人が置かれる結果,後に発起人の責任追及や権利の帰属をめぐる無益な法律紛争を惹起するというような弊害もある。」
これに続けて,「会社債権者の保護は,発起人の員数の規制によるよりも,相当額の危険資本の拠出の確保と発起人および最初の取締役の責任の強化,さらには会社財産の個人財産との分別管理の徹底によって賄う方が合理的である。」と書かれています。



再録 発起設立と募集設立 最終回 [会社法いろいろ]

 発起設立と募集設立をテーマにしてまだまだあるのですが,そろそろこれで最後にしようということで,その最終回として,2つほど。募集設立を存続させたために浮上した問題ではないかと私が考えるものです。

 最初は,発起設立によるか募集設立によるか,発起人は,これをいつまでに決めなければならないのかという問題です。原始定款の認証を受ける時まででしょうか,あるいは,その後の設立手続に入る時まででしょうか(例えば,会社法32条所定の設立時発行株式に関する事項の決定の時),これと連動するのですが,発起設立の手続で株式会社を設立することにして,設立手続を開始したが,その後,募集設立に変更することができるか。

 会社法の条文を見渡しても,いつまでにということは書いてありません。もちろん,設立時発行株式を引き受ける者の募集をして,引き受けた者が出資の履行をして・・・となるともはや発起設立というのはないのでしょうけどね。
 そこで,発起設立にするか募集設立にするか定款で定めて設立手続を開始することも,もちろん可能だけれど,その必要はない。通常は,設立時株式の決定事項を定める時に決定することになるのだろうと思います(実際は,株式会社を設立しようと思った時から,決まっていることだと思いますが,ここでは,決定のリミットの問題です)。発起人の出資の完了後でもいいと解されています(論点解説 新・会社法P26参照)。出資の完了後でもいいとなると,資金が足りないなということになったときに,募集して資金調達することが可能となります。つまり,発起設立で出発して,問題なく,募集設立とすることができるということです。旧商法時においては,このようにフレキシブルではなかったように思います。

 問題は,その次ですが,定款で取締役等を定めることができるかどうかです。旧商法時においては,実務では,発起設立においては許されるが,募集設立においては許されないと解されていました(商事法務No.1298 P38,実務相談1 P176参照)。通説もそうだったのではないでしょうか。募集設立は,発起人以外に株式引受人がいるから発起人だけで選任することはできず,創立総会で選任するのだというのがその理由です。

 では,会社法のもとではどうか。まず,発起設立においては,定款で設立時役員等をさだめることができることは,条文上の根拠があると言えます。会社法38条3項ですね。「定款で設立時取締役,設立時会計参与,設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は,出資の履行が完了した時に,それぞれ設立時取締役,設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。」定款で設立時役員等を定めることができることが前提となっています。では,募集設立ではどうか。規定がありません。

 私は,募集設立を存続させた以上,その違いも存続するだろうと考えたということもありますが,発起設立にある規定が募集設立においてはないということから,これまでどおり,募集設立においては,定款で設立時役員等を定めることはできないだろうと考えました。ところが,立法担当官は,募集設立の場合にも許されるという見解を表明しました(登記情報540号 P16~P17)。その理由は,募集株式の引受けにより株主となる者に定款の内容を知る機会が与えられる上に,創立総会の決議によって定款の内容を変更することもできるというものです(同P16)。この見解が民事局の見解であると考えられます。

 旧商法時代の実務では,定款で取締役等を定めると,それは,発起設立であるということだったのですが,会社法のもとで上記の見解によれば,いくら設立時役員等が定款で定められていようとも,いずれであるかは,その後の手続によって判明するということになります。



再録 発起設立と募集設立 その4 [会社法いろいろ]

 会社法は,株式会社の設立の方法として,発募集設立の方法を存続させることにしました。これにより,依然として,両者の異同,比較が問題となります。もちろん,募集設立の方法を存続させて,発起設立と募集設立の方法の二つの方法があるということですが,だからと言って,これまでと全く同じではなく,各所に改正が加えられています。

 その中の一つ,払込取扱銀行等の払込金保管証明責任について,実は,これが,今回のシリーズのテーマだったのです。平成2年商法改正後,平成17年会社法成立まで,発起設立においても,募集設立においても,払込みは,発起人が定めた払込取扱金融機関(以後,払込取扱銀行等)でしなければならないことになっていて,その銀行等は払込金保管証明責任を負わされたのでした。これは,払込みの仮装を防止し,出資の履行を確実にするというのがその理由でした。

 このように,発起設立であっても,銀行等との間で銀行等が払込取扱銀行等となる委任契約をして,手数料及び報酬を支払わなければならなかったのです。銀行等が払込取扱銀行等になってくれた上で,ということで,費用がかかることはもちろん,時間もかかります。

 そこで,会社法は,発起設立について,払込みについて,発起人の定めた銀行等の払込み取扱場所においてしなければならないという点において,払込みの仮装を防止し,出資の履行を確実にするということを実現しようとするのですが(会社法34条2項),銀行等の払込金保管証明責任については,廃止しました。

 しかし,募集設立においては,この銀行等の払込金保管証明制度を存続させました。立案担当者は,どう説明しているでしょうか。

 「なお,会社法では,このように,発起設立の場合と募集設立の場合とで規律に差異を設けているが,これは,①株式会社の設立手続の遂行主体である発起人のみが出資者である場合には,出資者自身が,その出資された財産の保管に携われることから,特段の措置を設ける必要がないのに対し,②設立手続の遂行主体でない者が出資する場合であって,かつ出資の対象である株式会社がいまだ法主体としては成立していない状況にある募集設立においては,出資者が出資した財産の保管状況を明らかにする払込保管証明制度を維持することが相当であるためである。」(立案担当者による新・会社法の解説P18)

 「募集設立の場合には,いまだ会社が成立しておらず,また,設立事務に直接関与しない設立時発行株式の引受人が存在することから,そのような引受人の出資金が発起人等に不当に流用されないようにするため,払込金保管証明制度(64条)がなお維持されている。」(論点解説 新・会社法P29)ストレートに書いてあります。

 というわけで,立案担当者の見解では,払込金保管証明制度は,設立時発行株式の引受人だけの保護の規定だということです。設立された株式会社のためでなく,債権者のためでなくのように読めます。発起設立の場合には払込金保管証明制度はないのですから,そう説明せざるを得ないということでしょうか。前二者は,払込取扱銀行等の規制で賄っているということになりますね。

再録 発起設立と募集設立 その3 [会社法いろいろ]

 採録 2010.06.04から

 発起設立と暮秋設立 その3 募集設立の方法の存続の理由


 会社法制の現代化に関する要綱試案では,株式会社の設立手続を発起設立に一本化するという方針を立てたのに,会社法は,募集設立の方法を存続させることとしました。

 ということは,要綱試案の(注)にあった「実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」からきたものということになりますね。もっとも,「実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」は,「募集設立を廃止することに伴い,発起設立に関して見直すべき点があるかどうかについて,」につづくものです。「発起設立について見直すべき点があるかどうかについて」ですから,発起設立に一本化するというのは,前提のように読めます。

 ともあれ,募集設立を存続させたのは,「現在の実務において募集設立が用いられる可能性が皆無ではなく,設立当初から発起人としての責任を負わない形で出資者になることについてニーズが否定できないということもあり,結局,募集設立の方法も維持することとされ,・・・」という説明がされることになりました(立案担当者による新・会社法の解説P14~P15)。

 この「ニーズを否定できない」ということが,要綱試案補足説明のいう「試案では,募集設立に対する利用のニーズが減少していること,会社法制の現代化に当たり規定の簡素化・明瞭化を図るべきであること等の点を踏まえ,募集設立という方法を廃止し,発起設立という方法に一本化することとしている。」(旬刊商事法務No.1678 P47)からして,「規定の簡素化・明瞭化を図る」よりも,価値的に上であると位置づけられたことになります。果たして,会社法のもとで,どれだけ募集設立によって株式会社が設立されているか,それは,どのような株式会社か,資料がほしいところです。

 なお,要綱試案補足説明中に,「なお,募集設立を利用するニーズの主なものとして,設立手続における発起人と株式引受人との責任・義務・地位等の違いから,設立時点での株式会社に対する資金提供者とはなるものの,発起人としての責任を負わないことを望む者が存在するという指摘があるが,部会においては,このようなニーズに対しては,設立と同時に株式の譲渡を行うことにより対応が可能ではないかという意見が出された。」との記述があります。

 また,立案担当者による新・会社法の解説P14では,「なお,法制審議会会社法(現代化関係)部会における会社法制の現代化の検討過程においては,・・・・中略・・・発起設立の方法に一本化することも検討された。特に,会社法においては,株式会社の最低資本金制度が廃止されることから,少額の出資による発起設立をした直後に株式を引き受ける者を募集することにより,募集設立と実質的には同等の結果が得られることにかんがみると,募集設立を維持することに特段の意味はないとも考えられたためである。」という記述があります。

 このようにして,募集設立が存続となったことから,依然として,発起設立と募集設立との比較が重要な問題となっています。どこが,違うかですが,もちろん,理論的には,核は,設立時発起人以外の設立時募集株式の引受人の存在,その保護となります。

 その中のひとつ,払込取扱銀行等の保管証明責任に,次回,戻ることにします。

2010.08.05 追記版 「司法書士試験 受験生のためのCheck Test 会社法」の再開 [Twitterから]

 8月2日より,「司法書士試験 受験生のためのCheck Test 会社法」を再開しようと思います。長い間のお休みをいただきました。

 本年度の司法書士試験筆記試験を受験されたみなさんは,合格間違いなしと確信されている方は別として,来年合格を期すと決意された方だけでなく,そうでない方も,すでに勉強を再開されていることと思いますし(していなければ早く),長年,「1年は短い,疲れが取れたら,すぐに来年に向けて勉強を再開しなければならない」と言い続けた私としても,合格を応援する私としても,いったん始めたtwitterでのCheck Testを再開しなければなりません。何より,継続は力なりですからね。

 再開は,7月2日分からの続きと当然のように考えていました。しかし,これからのYOUR PROJECTの計画をいろいろ考えていて,また,お寄せいただいた質問や要望等から,できるものであれば,基礎固め用(初級者用とは限りません),中級者用,上級者用,あるいは中上級者用と分けて,提供することがいいと実感するようになりました。

 そこで,基礎固め編と中上級編あるいは中級編,上級編に分け,まず,基礎固め編から,再スタートしようと思います。答えは,基本的に○×です。条文読みなさいよというときは,条文(第○○条第○項)を示します。解説したいなと思ったときは,このブログに書くことにします(これまで通りです)。

 「体系書 会社法」に従って,作成して行き,解答の際にその頁を示し,「体系書 会社法」を持っている方は,これに従って,読み進むことができるようにしたいと思います。問題編と解答編に分かれますが,解答編には,問題文を表示しません(表示すると140字の問題で面倒な事態が発生したことがたびたびなもので)。できれば,これ用にリストを作って,見てもらうといいと思います。

 土曜日及び日曜日はお休みとし,もし,ウイークデイにやむなく休んだ場合には,その週の土曜日又は日曜日に振り替えることとし,問題は朝,解答は晩ということにしたいと思います。



twitter
http://bit.ly/cDWVp1
http://twitter.com/ueda_m

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8月5日追記
 できたら,問題文を読んで○とか×とか,頭の中だけでなく,紙もしくはPCに表をつくって(エクセル等を使って)記録していくといいのではないかと思います。朝に解答して夜に正解したかどうかを確認して,採点しておく。できれば,どうして間違ったかもあるといいですね。知らなかった。○○とかんちがいしていた,読み間違えた・・・条文をきちんと読んでいなかった・・・。特に,○○とかんちがいしていたというとき,これをすぐに確認するかどうかが,資格試験に合格するためにとても大事なことではないかと,私は,長年の受験指導を通じて思うようになりました。もちろん,確認しても忘れることが多いから,メモ等で残さなければなりません。トンネルからなかなか抜け出せない受験生にとって,トンネルから抜け出すことができるかどうかのポイントになるのではないかと思っています。
 
 表を作成すると継続することができます。幼稚園の園児のように,シールを貼ってという訳には行かないでしょうが,休まずに続けてきた自分の記録がどこかにあると,自分を励ますことができるのではないでしょうか。

 継続は力なり 最近,いろいろなところで使っている言葉です。自分に向けても言い聞かせています。

再録 発起設立と募集設立 その2 [会社法いろいろ]

 再録 2010.06.03から

 発起設立と募集設立 その2

 平成2年の商法改正において,発起設立の手続の改正が行われました。立法担当官の著「改正会社法」では,設立手続の合理化として,発起人の員数,最低資本金制度につづき,「発起設立における検査役の調査の廃止と株式の払込取扱機関の介在」という項目が挙がっています。

 えっ発起設立においては検査役の調査は,平成2年の改正によってなくなっていたのか・・・。そうではありません。調査の対象の問題です。それまで,発起設立においては,変態設立事項だけでなく,払込み及び現物出資の給付の有無についても,裁判所に検査役の選任を請求して,検査役の調査を受けなければならなかったのですが,これを廃止したのです。払込み及び現物出資の給付の有無について検査役の調査を要するとするのは,払込取扱銀行等において払込みをしなければならないとはされていなかったことと対になっていました。そこで,同時に,募集設立だけでなく,発起設立においても,払込取扱銀行等においてしなければならないとされました。

 そして,同時に,払込取扱銀行等の払込金保管証明についても,それまでは,募集設立についてのみ適用があったのですが,この改正により,発起設立においても適用があることとされました。

 さて,会社法はどうなっていますか?払込取扱銀行等への払込みという点については,募集設立と発起設立とで違いはありませんよね。では,払込取扱銀行等の払込金保管証明制度についてはどうでしょうか? そうです。募集設立の場合だけとなっています(会社法64条)。この払込金保管証明制度の点においては,平成2年の商法改正前に戻ったことになります。

 発起設立において,上記の改正をした理由は何か。それは,多くの場合,発起人以外の者から出資を募集することはないだろうから,株式会社を設立するには募集設立の方法よりも発起設立が適当である・・・にもかわらず,それまで,発起設立の利用が少なかった・・・どうしてだろう・・・。それは,発起設立の手続によれば,変態設立事項がなくても,かならず裁判所に検査役選任の請求をしてその検査を受けなければならない,時間がかかる(費用もかかる),迅速に設立できない・・・これが原因ではないか・・・。発起設立を利用されやすいようにするべきであるが,どうすればよいか,上記の検査役の調査を廃止するのがよい,しかし,出資の履行を確保する必要がある・・・払込取扱銀行等においてということにしよう・・・というわけです(現物出資についても他の方法による給付の確保に関する一定の手当てがされました)。

 このような改正が行われた結果,さて,会社法制の現代化に関する要綱試案を作成する段階において,株式会社の設立の方法としては,「募集設立に対するニーズが減少している」(会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明)ということになりました。

 「会社法制の現代化に関する要綱試案補足説明」において,株式会社の設立方法を発起設立に一本化する理由として,次のように述べられています。

 「・・・募集設立に相当する設立手続がない有限会社と株式会社との規律を一体化するに当たり,両者の差異をどのように調整するかが問題となる。
 さらに,発起設立と募集設立という二つの設立手続に関する規定が設けられているため,株式会社の設立手続は極めて複雑で分かりにくい規定となっている。
 試案では,募集設立に対する利用のニーズが減少していること,会社法制の現代化に当たり規定の簡素化・明瞭化を図るべきであること等の点を踏まえ,募集設立という方法を廃止し,募集設立という方法に一本化することとしている。」

 というのですが,しかし,会社法は,募集設立の方法を存続させました。なぜなのでしょうか?次回です。



 8月2日からtwitter版 司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法を再開しました。

 http://twitter.com/ueda_m

再録 発起設立と募集設立 [会社法いろいろ]

 このところ,今年の司法書士試験の午前の部商法をみて,これに関連したことを書いてきましたが,商法は,昨日で,受験生の皆さんが,気になっていた問題については,一応終了したような気がしています。

 さて,今日はどうするかな,しばらく違うことするかな,一般社団・財団法人がとうとう出題されたことでもあるし,その問題にでも行こうかなと思いましたが,twitterでつぶやいたように,昨日から,このブログへのアクセスが急増して,初めて読むと言う方が大勢のようなので,過去書いたもので,今年の本試験に関係ありそうなものを読んでもらうのがいいなと思いました。

 それで,過去のブログを見ていたのでしたが,今年の第27問 発起設立と募集設立の比較に関して,次のものを読んでもらおうと思います。探し出すのが面倒だと言う声も聞こえてきそうなので,何回かにわたっての再録です。発起設立と募集設立の比較は,会社法施行後直後の平成18年でも出題されています。落としてはならない問題となっています。


 再録 2010.06.01から

 発起設立と募集設立 その1

 今を去ること何年前になるでしょうか。平成15年10月22日に法制審議会会社法(現代化関係)部会は,会社法制の現代化に関する要綱試案を発表しました。それから,かなり早い時期だったと思いますが,説明会が開催されたので聞きに行きました。どこであったのか,はっきりとした記憶がありません。平成2年の商法改正以来,改正に係る法制審議会部会長や立法担当官による説明会や講演会,パネルディスカッション等できるかぎり聞きに出かけて行くようにしていたのですが,会場がいろいろなところであったため,どこの会場だったか,情けないことに,特定できません(九段会館?)。もっとも,会場はどこでもいいのですが,壇上に立たれたのは,江頭先生であったという記憶は,はっきりしています。それまで,法制審議会の部会長として登場されるのが前田先生だったのですが,そのときから,前田先生から江頭先生に代わって,初めての説明会だったと思います。

 会社法制の現代化に関する要綱試案では,驚くことがたくさんありました。その中の一つが,株式会社の設立手続の方法を一本化し,発起設立だけにするというものでした。次のとおりです。

 第四部 株式会社・有限会社関係 第二 設立等関係 3 募集設立 「株式会社の設立手続のうち募集設立という方法を廃止し,発起設立に一本化するものとする。」

 今,この要綱試案を読み返してみれば,確かに(注)があって,(注)「募集設立を廃止することに伴い,発起設立手続に関して見直すべき点があるかどうかについて,実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」とあります。この(注)により,会社法は,募集設立を存続させたのでした。

 私は,この説明会の後,講義で何度か,商法が改正されれば,発起設立だけになりますと話したことがあります。今頃何を言っているか・・・ですが,取り消さなければなりませんね。しかし,説明会の時以後,ずっと,新しい会社法では,発起設立しかないと思い込んでいましたから。だから,講義で,商法が改正されれば,株式会社の設立手続の勉強は簡単になりますねと言ったのでした。

 ところが,会社法は,募集設立の手続を存続させたのでした。では,法制審議会は,なぜ,発起設立一本化の方針を立てたのでしょうか。平成2年の商法改正にさかのぼります。次回です。

 受験勉強に直結しないかもしれませんが,へ~昔はそうだったんだという感じで読んでもらえばいいと思います。それによって,現在がどうかきちんと記憶にとどまるのではないでしょうか。また,本職になってから,制度改正を考えるときに,もしや役に立つかもしれません。

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平成22年度 午前の部 第31問 エとオ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 第31問で多くの受験生が考え込んだのは,エとオではなかったかと思います。

 会社法429条1項の株式会社の第三者に対する責任の法的性質については,争いがあるわけですが,判例及び通説は,法定責任説に立っています。これは,法が認めた特別の法定責任(法定の特別責任)であるとするものです。この見解は,株式会社が経済社会において重要な地位を占め,役員等がその職務を行うについて第三者に損害を生じさせることがあるため,第三者保護の必要性があることから,特に,規定を置いたものであるとし,悪意や重過失は,第三者の加害の点ではなく,株式会社に対する任務の懈怠についてであるとします。判例もこの見解に立ちますが(最(大)判S44.11.26参照),任務の懈怠ですから,役員等が職務権限を有することが前提となっています。したがって,この法定責任説と設問の見解との間には,論理的な関係はない・・・むしろ,取締役ではなく,取締役の職務権限を有しない表見取締役に,会社法429条1項の責任を課すことは,理論上無理があるのではないかという疑問も生じます。
  しかし,法定責任説に立つ判例(教授の示した見解)は,表見取締役は,登記事項が不実であること,換言すれば,当該会社の取締役でないことをもって善意の第三者に対抗することができず,その結果として,旧商法266条ノ3にいう取締役としての責任を免れることができないとしています。つまり,会社法908条2項が類推適用される以上,当該表見取締役は,自己が取締役でないことをもって,第三者に対抗することができず,その結果として会社法429条1項の責任を免れないと結論づけています(会社法判例百選P163参照 )。
これに賛成する学説においては,「ここに取締役でないということは,Yが取締役としての業務執行の権限義務を有しないことを善意の第三者に対抗することができないということであり,したがってYは第三者に対して責任を負わなければならないとされ,その責任の根拠は,Yが何もしなかったことあるいは業務一切を他の取締役に任せきったことに求められている」(同)。これが,つまり,学生オの解答になります。

 平成22年度 午前の部 第31問
 教授: 一方,会社法第429条第1項の責任の法的性質については,取締役の会社に対する任務懈怠があれば,第三者に対する故意・過失がなくても責任が生じ得る法定の特別責任であるとの考えがありますが,そのような考えは,この見解と論理的な関係がありますか。
 学生:エ 会社法第429条第1項の責任を法定の特別責任を解することにより,会社法第908条第2項を通して外観に対する信頼を問題にすることができると説明することができるので,そのような考え方は,この見解と論理的な関係があります。×
 教授: この見解によると,会社法第429条第1項の「役員等がその職務を行うについて」の要件については,どのように考えますか。
 学生:オ 表見取締役は,真実,取締役ではないものの,取締役としての権限・義務がないことをもって善意の第三者に対抗することができないので,何もしないことが取締役がその職務を怠っていることになると考えます。○

最判昭和47年6月15日 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 最判昭和47年6月15日(民集26巻5号984頁)

 「ところで、原審の確定した事実によれば、上告人の取締役への就任は、右会社の創立総会または株主総会の決議に基づくものではなく、まつたく名目上のものにすぎなかつたというのである。このような場合においては、上告人が同会社の取締役として登記されていても、本来は、商法266条ノ3第1項にいう取締役には当たらないというべきである。けだし、同条項にいう取締役とは、創立総会または株主総会において選任された取締役をいうのであつて、そのような取締役でなければ、取締役としての権利を有し、義務を負うことがないからである。
 商法14条は、「故意又ハ過失ニ因り不実ノ事項ヲ登記シタル者ハ其ノ事項ノ不実ナルコトヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ」と規定するところ、同条にいう「不実ノ事項ヲ登記シタル者」とは、当該登記を申請した商人(登記申請権者)をさすものと解すべきことは諭旨のいうとおりであるが、その不実の登記事項が株式会社の取締役への就任であり、かつ、その就任の登記につき取締役とされた本人が承諾を与えたのであれば、同人もまた不実の登記の出現に加功したものというべく、したがつて、同人に対する関係においても、当該事項の登記を申請した商人に対する関係におけると同様、善意の第三者を保護する必要があるから、同条の規定を類推適用して、取締役として就任の登記をされた当該本人も、同人に故意または過失があるかぎり、当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗することができないものと解するのを相当とする。
 上告人が前記訴外会社の取締役に就任した旨の登記につき、同人が承諾を与えたことは、前示のとおりであり、同人が右登記事項の不実であることを少なくとも過失によつて知らなかつたことは原審の適法に確定するところであるから、同人は、右登記事項の不実であること、換言すれば同人が同訴外会社の取締役でないことをもつて善意の第三者である被上告人に対抗することができずその結果として、原審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人は被上告人に対し同法266条の3にいう取締役としての責任を免れ得ないものというべきである。」

 商法14条 ⇒ 現商法9条2項,会社法908条2項
 商法266条ノ3第1項 ⇒ 会社法429条1項

 上記のように,最高裁判所は,旧商法14条(不実登記の効力)の類推適用という方法を経由することにより,旧商法266条ノ3による名目取締役の責任を肯定しています。以下,会社法の条文に置き換えて説明することにします。

 選任決議がない取締役は,会社法429条1項にいう役員等(取締役)ではない。⇒ しかし,就任の登記につき取締役とされた本人が承諾を与えた。 = 不実の登記の出現に加功した。 ⇒ 善意の第三者を保護する必要がある ⇒ 会社法908条2項の類推適用(不実の事項を登記した者には当たらない) ⇒ 当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗することができない ⇒ つまり,取締役ではないことを善意の第三者に対抗することができない ⇒ 善意の第三者との関係では,会社法429条1項の取締役に当たる。 

 平成22年度司法書士試験午前の部第31問 
 教授: 表見取締役が故意又は過失によりその登記につき承諾を与えていたときは,当該表見取締役は,会社法第908条第2項の類推適用により,自己が取締役でないことをもって善意の第三者に対抗することができず,会社法第429条第1項の「取締役」に該当し,同項所定の第三者に生じた損害を賠償する責任を免れないとの見解があります。   この見解が,会社法第908条第2項を直接適用するとしていないのは,なぜですか。  学生:ア 会社法第908条第2項の「不実の事項を登記した者」には,当該登記を申請した会社だけではなく,不実の登記行為に加功した者も含まれるからです。

 この見解は,つまり,判例の見解になるわけですが,上掲判決2段目にあるように,「不実の事項を登記した者」は,登記を申請した商人(登記申請権者)…ここでは,会社です…をさすと解しているから,直接適用することはできない,類推適用だということになります。不実の登記行為に加功した者も含むというように拡張して解釈するのであれば,直接適用となります。したがって,アは,明らかに誤った記述となります。

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表見取締役と名目取締役 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 表見取締役と名目取締役
 両者を事実上の取締役という範疇でくくることもできるとする記述もあります(有斐閣アルマ商法総則・商行為法 第2版 P171)。しかし,前者と後者は,法律上,取締役であるかどうかで決定的に異なります。前者は,司法書士試験の問題文にあるように,「取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者」であり,つまりは,適法な選任手続を経ていない取締役ということになります。つまり,取締役ではないのだということですね。上記書は,「登記簿上の取締役」と呼んでいます。会社法判例百選P162もそうです(79 選任決議を欠く登記簿上の取締役と第三者責任)

 これに対して,名目取締役というのは,旧商法時代の株式会社でよく存在していました(今でもあちこちに存在しているのではないでしょうか)。旧商法時代には,株式会社は,必ず取締役を3人以上選任して取締役会を設置しなければならなかったため,有限会社ではなく,株式会社にしたいという個人事業主は,法人成りに際して(事業をはじめるについて最初から株式会社を設立する場合もですが),員数揃えのため友人・知人に頼みこんで,取締役に就任してもらうというものです。取締役になった彼らは,取締役としての職務を何もしない・・・そのうち,会社が倒産して,会社の債権者が,名目取締役に対して,会社法429条1項によって責任追及をするということになります。

 名目的取締役は,取締役ですから,会社法429条1項の「役員等」に当たると言えますし,取締役会の構成メンバーとして,代表取締役を監督する取締役としての任務懈怠があり,重過失を認定することもできると考えられますから,会社債権者は,名目取締役に対して,会社法429条1項により,損害賠償責任を追及することができると考えられます。名目取締役の責任を肯定した判例として,最判昭和55年3月18日があります。

 しかし,表見取締役は,取締役ではありません。したがって,会社法429条1項の「役員等」には当たりません。それにもかかわらず,最判昭和47年6月15日は,就任の登記について承諾を与えていた者について,会社法429条に当たる旧商法266条ノ3の責任を免れないとしました。本年度の司法書士試験午前の部第31問は,この判例をもとに出題されています。


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